林竹二

林竹二（はやし たけじ）

林竹二（1906年12月21日 - 1985年4月1日）は、日本の著名な教育哲学者であり、東北大学の名誉教授、そして宮城教育大学の学長を務めました。彼の専門はギリシア哲学であり、特にプラトンに関する研究で知られています。

生涯

栃木県矢板市に生まれた林竹二は、東北学院で学び、その後、1934年に旧制東北帝国大学法文学部哲学科を卒業しました。東北学院時代には山川丙三郎に師事し、東北帝国大学では阿部次郎に影響を受け、阿部次郎全集の編集に携わりました。また、A.E.テイラーの『ソクラテス』に注釈を加えて翻訳・出版したことで、バーネット・テイラー説の信奉者として広く認識されました。

第二次世界大戦後、林は東北大学教育学部で教育史を担当し、森有礼に関する研究を行いました。また、ソクラテスの問答法を基盤とした人間形成論を提唱しました。

東北大学から教育学部と教職課程を分離し、宮城教育大学として独立させる計画が持ち上がった際、林は最後までこの計画に反対しました。しかし、最終的には反対派の意見は受け入れられず、宮城教育大学が設立されることとなりました。1969年、林は同大学の第二代学長に就任しました。学長として、常に学生の立場に立ち、大学紛争が激化し学生たちが大学構内を封鎖した際には、自ら構内に入り学生たちとの対話を試みました。彼は学長室を封鎖されたバリケード内に移したいと主張するほどでした（しかし、実際には実現しませんでした）。これらのエピソードは、彼の学生に対する深い理解と共感を示すものとして語り継がれています。

晩年は、足尾鉱山事件における田中正造に関心を寄せ、その評伝を執筆しました。また、斎藤喜博の影響を受け、全国各地の小学校を訪れて対話的な授業を実践するなど、教育の現実と深く関わる姿勢は多くの人々の共感を呼びました。彼の授業実践をまとめた『授業・人間について』は書籍として刊行されただけでなく、グループ現代によって映像化され、写真集も出版されました。小学生を対象とした授業では、野生児アマラとカマラの絵を教材として用い、「人間とは何か」という根源的な問いを児童に投げかけました。

国文学者の林瑞栄は彼の妻であり、考古学者の林謙作（北海道大学教授）は長男です。

著作

『授業・人間について』国土社 1973年
『田中正造 その生と戦いの「根本義」』二月社 1974年、のち田畑書店
『授業の中の子どもたち』構成:松本陽一 カメラ:小野成視 日本放送出版協会 1976年
『田中正造の生涯』講談社現代新書 1976年
『教育の再生を求めて 湊川でおこったこと』筑摩書房 1977年
『授業の成立』一茎書房 1977年
『教えるということ』国土社・新書 1978年
『教師たちとの出会い』国土社 1978年
『学ぶということ』国土社・新書 1978年
『学ぶこと変わること 写真集・教育の再生をもとめて』小野成視写真 筑摩書房 1978年
『学校に教育をとりもどすために 尼工でおこったこと』筑摩書房 1980年
『問いつづけて 教育とは何だろうか』小野成視写真 径書房 1981年
『教育亡国』筑摩書房 1983年、のち学芸文庫
『林竹二著作集』全10巻 筑摩書房 1983-87年
『若く美しくなったソクラテス』田畑書店 1983年
『教育の根底にあるもの』径書房 1984年
『授業による救い 南葛飾高校で起こったこと』径書房 1993年
『続 授業による救い 南葛飾高校で起こったこと』径書房 1993年

共著

『対話子どもの事実 教育の意味』斎藤喜博共著 筑摩書房・ちくまぶっくす 1978年
『教えることと学ぶこと 対談』灰谷健次郎共著 小学館 1979年
『いま授業を変えなければ子どもは救われない』遠藤豊共著 太郎次郎社 1981年
『授業を追求するということ 城南小におこったこと』伊藤功一共著 国土社 1982年
『からだ=魂のドラマ 「生きる力」がめざめるために』竹内敏晴編 藤原書店 2003年

翻訳

アルフレッド・エドワード・テイラー『ソクラテス』桜井書店 1946年

関連書籍

国土社編集部編『林竹二その思索と行動』国土社 1985年
日向康『林竹二・天の仕事』講談社 1986年、のち現代教養文庫
小林洋文『人間を学ぶ 林竹二先生の人と思想』径書房 1990年
安里盛市『林竹二・斎藤喜博に学んで』一茎書房 1992年
灰谷健次郎『林先生に伝えたいこと』新潮社 1991年、のち文庫、角川文庫
大泉浩一『教育の冒険 林竹二と宮城教育大学の1970年代』本の森 2003年
田中武雄『行為〈プラクシス〉としての教育 林竹二論ののちにくるもの』教育史料出版会 2010年
鈴木清隆『林竹二 その授業と思想』揺籃社 2015年

外部リンク

* 国立国会図書館 憲政資料室 林竹二旧蔵資料

もう一度検索