林誠之助

林誠之助：歌舞伎から映画界へ、そして実業家へ

林誠之助（はやしせいのすけ、1907年3月 - 1988年12月9日）は、日本の俳優である。本名は久保十郎（くぼじゅうろう）。佐賀県武雄市橘町に生まれ、旧制・佐賀県立鹿島中学校に通っていたが、1923年に中途退学。その後、二代目市川荒太郎に入門し、歌舞伎役者の道を歩み始める。

1924年、師である荒太郎と共に京都の松竹下加茂撮影所に入社。「林誠之助」の名で映画界にデビューを果たす。荒太郎が同撮影所を退社した際には、林は松竹キネマに残留し、東京の松竹蒲田撮影所に異動した。1927年6月、松竹を退社し、同年9月には京都のマキノ・プロダクションに入社する。

マキノ・プロダクション在籍中は、『ひよどり草紙』シリーズなどに出演。1928年4月、マキノ・プロダクションを退社し、日本映画プロダクション連盟に参加。同年5月10日には、片岡千恵蔵が設立した片岡千恵蔵プロダクションに参加。1937年の同プロダクション解散まで、数々の作品で重要な脇役として活躍した。

片岡千恵蔵プロダクション時代は、『天下太平記』、『放浪三昧』、『愛憎血涙』など、多くの作品に出演。その活躍は自主配給作品から、日活、日本映画配給、新興キネマと配給会社を問わず、多岐にわたる。

1937年、片岡千恵蔵と共に日活京都撮影所に入社。1939年11月1日に公開された『股旅日本晴れ』以降の出演記録は確認できない。第二次世界大戦中には俳優業を廃業し、実業界に転身。故郷である御船山近辺で成功を収めたと言われている。

林誠之助はサイレント映画からトーキー映画へと時代を駆け抜けた俳優であり、そのフィルモグラフィーは、松竹蒲田撮影所、マキノ・プロダクション、片岡千恵蔵プロダクション、日活京都撮影所と、当時の日本の映画業界を代表するスタジオで制作された多くの作品を網羅している。彼の演じた役柄は、時代劇における悪役からコミカルな役まで多様で、その存在感は作品に深みを与えていたと推察できる。

現在、東京国立近代美術館フィルムセンターなどには、彼の出演作品の一部が所蔵されているものの、多くの作品は現存していない。特に1940年代以前の作品については、その多くが失われており、彼の全貌を把握するには、さらなる資料の発見が不可欠である。

彼の晩年については、資料が乏しく不明な点が多い。実業家として成功を収めたという情報はあるものの、具体的な事業内容やその成功の度合いなど、詳細は明らかにされていない。没年についても、諸説ある。

林誠之助は、日本映画史において重要な脇役を担った俳優であった。彼の存在は、多くの作品を彩り、戦後の日本の映画界に大きな影響を与えた片岡千恵蔵をはじめとする巨匠たちの活躍を支えたものだったと言える。彼が残した作品と功績は、日本の映画史研究において今後も注目に値するものである。また、林誠之助としばしば混同される林誠太郎との区別も、今後の研究課題と言えるだろう。

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