林香里

林香里（はやし かおり）

1963年生まれの日本のメディア学者。東京大学大学院情報学環教授、東京大学理事・副学長という要職を兼任。

人物・来歴

愛知県名古屋市出身。翻訳家の林昌宏氏を弟に持つ。南山大学外国語学部英米科を卒業後、ドイツとアメリカの大学へ留学。ロイター通信東京支局での勤務を経て、ドイツの大学で研究に励む。1995年に東京大学大学院社会学研究科修士課程を修了、その後博士課程を満期退学。2001年に博士号を取得。ドイツ・バンベルク大学での客員研究員を経て、東京大学社会情報学環の助教授、教授となる。2021年には東京大学理事・副学長に就任。

研究活動とメディアへの関与

林氏は、マスメディア研究における第一人者として知られ、特にジェンダーの視点からのメディア分析や、ジャーナリズムのあり方について深く研究している。朝日新聞論壇時評欄では、女性初の筆者として、メディアの現状に対する鋭い視点を提示している。

また、日本新聞協会が賛助会員である日本マス・コミュニケーション学会の理事を務める一方で、新聞協会に加盟している一部メディアに対して批判的な立場をとっている。

著書

林氏は、多数の著書を通じて、メディア研究の知見を社会に発信している。

『マスメディアの周縁、ジャーナリズムの核心』（新曜社、2002年）
『「冬ソナ」にハマった私たち 純愛、涙、マスコミ…そして韓国』（文春新書、2005年）
『〈オンナ・コドモ〉のジャーナリズム ケアの倫理とともに』（岩波書店、2011年）
『メディア不信 何が問われているのか』（岩波新書、2017年）

共編著も多数あり、以下に代表的なものを挙げる。

『テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス 13局男女30人の聞き取り調査から』（谷岡理香共編著、大月書店、2013年）
『いま、ことばを立ち上げること』（細見和之、石井伸介、細川周平共著、関西学院大学出版会、2019年）
『メディアは誰のものか―「本と新聞の大学」講義録』（集英社新書、2019年、一色清、姜尚中、池上彰、青木理、津田大介、金平茂紀、平和博との共著）
『足をどかしてくれませんか。―メディアは女たちの声を届けているか』（亜紀書房、2019年、小島慶子、山本恵子、白河桃子、治部れんげ、浜田敬子、竹下郁子、李美淑、田中東子との共著、編者）
『いいね! ボタンを押す前に―ジェンダーから見るネット空間とメディア』（亜紀書房、2023年、李美淑、小島慶子、治部れんげ、白河桃子、田中東子、浜田敬子、山本恵子との共著）

論文・翻訳

「弱者の声をていねいにすくうメディアに――『客観・中立』をこえて、マスメディアに求められること」（『前衛』2019年5月号）など、多数の論文を発表している。

翻訳書としては、以下のようなものがある。

ニクラス・ルーマン『マスメディアのリアリティ』（木鐸社、2005年）
ドミニク・カルドン『インターネット・デモクラシー 拡大する公共空間と代議制のゆくえ』（トランスビュー、2012年、林昌宏と共訳）

メディアに対する批判的視点

林氏は、マスメディアが抱える問題点に対して、積極的に発言を続けている。特に、ジェンダー視点からのメディア分析では、メディアが女性やマイノリティをどのように描き、どのようにステレオタイプを形成しているのかを厳しく批判している。また、ジャーナリズムのあり方についても、客観性や中立性といった従来の価値観に疑問を投げかけ、より多様な視点を取り入れることの必要性を訴えている。

社会への貢献

林氏は、研究活動に加えて、社会に対しても積極的に貢献している。東京大学理事・副学長として大学の運営に携わる一方で、メディアに関する講演や執筆活動を通じて、社会的な課題に対する問題提起を続けている。その活動は、日本のメディア研究の発展に大きく貢献しているだけでなく、社会全体におけるメディアリテラシーの向上にもつながっている。

今後の展望

林香里氏の今後の活躍は、メディア研究の分野だけでなく、社会全体にとっても重要な意味を持つ。特に、デジタル化が急速に進む現代社会において、メディアの役割はますます大きくなっており、林氏の研究と発言は、より公正で透明な社会を築く上で不可欠なものとなるだろう。

外部リンク

東京大学大学院情報学環・学際情報学府 - 林香里 教授
東京大学大学院情報学環 - 林香里研究室
東京大学 - 林香里
* researchmap - 林香里

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