柳沢騰市

柳沢 騰市の生涯と業績

柳沢 騰市（やなぎさわ とういち、1908年6月23日生まれ）は、日本のプロ野球界で特異な足跡を残した選手で、群馬県から世界に舞台を広げた。彼は主に二塁手、三塁手、そして遊撃手として活躍したが、そのキャリアはただのスポーツ選手に留まらず、さまざまな活動に及んでいた。

来歴・人物背景

柳沢は上州の国定村、今の伊勢崎市近くで育った。地元の商業学校（現・群馬県立伊勢崎商業高等学校）を卒業した後、満州に渡って奉天満倶と奉天日満実業団でプレーを経験。その傍らで競輪選手としても名を馳せていたという。彼の多才さは、スポーツ界にとどまらず、エンターテインメントの世界にも広がった。帰国後、彼は日活太秦撮影所で大部屋俳優としても活動していた。

特に1932年、女優・入江たか子が設立した映画製作会社入江ぷろだくしょんに携わり、同じくここで設立された野球部に参加することになる。柳沢はこのチームの4番遊撃手としてその実力を発揮し、注目を集めていた。

プロ野球への道

彼の本格的なプロ野球選手としての歩みは、1936年に大東京軍に参加したことから始まった。監督の小西得郎に自らアプローチし、チームに加入すると、秋季リーグで試合に出場し始めた。早くからその俊足が評価され、特に1937年8月29日の金鯱戦ではプロ野球史上初の1イニング3盗塁を達成。この試合では、投手の隙を突く巧みなプレースタイルで場を盛り上げた。試合はライオン軍が6-1で勝利したが、この3盗塁の快挙は柳沢の名を不朽のものにした。

また、彼は犠打の名手でもあり、1937年秋季にはリーグで最多犠打を記録した。守備面では失策もあったが、動きのキレとその姿は多くのファンに人気があったとされ、洲崎球場では彼の登場に歓声が沸くことが多かった。

選手引退とその後

しかし、打撃面には難があり、1938年からは出場機会が減少。1939年の巨人戦を最後に現役を引退した。その後の人生は多岐にわたるもので、戦後はトンボ鉛筆の野球部監督やタクシー運転手など職を転々とした。また、国定忠治に似た性格で、大酒飲みで喧嘩早く、独特な行動でも知られていた。ある試合後には監督に安打証明書を書かせ、その証明書を入江に送り歓喜した逸話が残る。

偶然にも彼の最期については詳しい情報が残っていないが、柳沢のユニークな個性と彼が野球界にもたらした影響は、今もなお語り継がれる存在である。

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