栃木三鷹

栃木三鷹（とちぎさんたか）

栃木三鷹は、栃木県大田原市周辺で栽培されているトウガラシの一種で、栃木改良三鷹とも呼ばれています。一味唐辛子や七味唐辛子の原材料として広く用いられる、重要な品種です。

概要

1955年（昭和30年）、吉岡源四郎によって八房系品種（長三鷹など）から選抜・育成されました。吉岡氏は吉岡食品工業の創業者であり、東京でカレー粉用トウガラシの製造販売を手掛けていました。1941年（昭和16年）に那須郡大田原町（現・大田原市）へ移住し、トウガラシ産地の育成に尽力しました。

栃木三鷹の開発後、吉岡氏は種子の無償配布や契約栽培を導入し、栽培の普及に力を注ぎました。栽培面積が拡大すると、スリランカ（当時セイロンと呼ばれた）やアメリカへの輸出も開始され、最盛期の1963年（昭和38年）には4,300トンもの輸出量を記録しました。当時の日本全体のトウガラシ生産量はおよそ7,000トンであり、そのうち大田原市が5,000トンを占めていたことから、大田原の丘一面がトウガラシの赤色に染まっていたと言われています。

しかし、ピークを過ぎると、農家の減少や変動相場制への移行により輸出量は減少し、1976年（昭和51年）には輸出は0トンとなりました。2000年代の日本におけるトウガラシ生産量は200トン程度にまで落ち込み、国内消費量の95％を輸入に頼る状況となっています。

果実は成熟すると鮮やかな赤色を呈し、肉厚で先端が尖っているのが特徴です。辛味が非常に強い品種であり、従来の八房系トウガラシの弱点であった辛味の弱さを克服しました。また、熟期が揃いやすく、収穫しやすい上、多収であるという利点も持ち合わせています。大田原市では、農家1戸あたり2 - 3アールの畑で栽培されており、60 - 70キログラム（トウガラシの実で30 - 35万個）ほどの収量があります。地域団体商標にも登録されています。

興味深いことに、栃木三鷹は中国にも導入されています。1978年に中華人民共和国河南省淅川県香花鎮に導入され、栽培が開始されました。1993年8月には、中国国家工商局によって「香花小辣椒」の名前で登録商標を取得し、1994年10月には中国全国優良製品の金賞を受賞しました。その後も、北京国際農業博覧会での金賞受賞、中国農業部無公害農産物認証取得、2010年には中国国家農産品地理標志取得など、数々の栄誉に輝いています。2011年には、輸出される乾燥トウガラシの40％以上を香花小辣椒が占めるまでになっています。

関連項目

香花辣椒城
中国農産品地理標志登記の一覧

参考文献

松島憲一『とうがらしの世界』講談社〈講談社メチエ〉、2020年7月8日、245頁。ISBN 978-4-06-520292-0。

外部リンク

大田原＆とうがらし - とうがらしの郷 おおたわら
* 栃木三鷹 - 地方特産食材図鑑

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