栃赤城雅男

栃赤城雅男

栃赤城雅男（とちあかぎ まさお、1954年10月31日 - 1997年8月18日）は、群馬県沼田市で生まれ、春日野部屋に所属していた大相撲力士です。本名は金谷雅男。彼の相撲人生は華やかでありながら、波乱に満ちたものでした。最高位は東関脇であり、身長182cm、体重140kgの恵まれた体格から繰り出される取り口は「サーカス相撲」と称され、特に右四つや小手投げ、腕捻りといった技を得意としていました。

来歴と成長

栃赤城は沼田市の呉服店を営む家庭の中で育ちました。3人兄弟の次男として生まれ、中学校では水泳部、高校では柔道部に所属し、国民体育大会に柔道で出場する才能を持っていました。高校時代には体重が100kgを超えるまで成長し、春日野親方から数度にわたってスカウトされた結果、高校卒業前に春日野部屋に入門しました。相撲は初心者でしたが、彼自身は「勉強が嫌いだから」と柔道から相撲への転向を決意しました。

初土俵は1973年1月で、すぐに頭角を現し、序ノ口で勝ち続け、わずか1年半で幕下に昇進しました。1976年11月場所では十両に上がり、1977年5月場所には新入幕を果たし、「栃赤城」という新しい四股名に改名しました。この名前は故郷の赤城山に由来しています。

戦績と特徴

栃赤城はその取り口で多くのファンを魅了しました。「サーカス相撲」の名の通り、独特な技術とスピードを兼ね備え、特に1979年の貴ノ花戦で見せた捨て身の小手投げは記憶に残る名勝負です。彼は横綱に対しても強さを発揮し、1979年11月場所では三横綱から金星を獲得するなど、確固たる実力を持っていました。しかし、彼の相撲は怪我との戦いでもあり、通算で複数回の怪我に悩まされました。

関脇に長く留まった時期もあり、大関の候補として期待される一方で、怪我と私生活の乱れが影響し昇進は叶いませんでした。稽古嫌いや暴飲暴食、喫煙など生活習慣が大成の妨げとなり、春日野親方の評価も芳しいものではありませんでした。

引退と晩年

1985年以降、栃赤城は幕下を往復する生活となり、1990年には師匠の死去を受けて廃業を決意します。彼の引退は多くのファンに衝撃を与えましたが、相撲から去った後は家業の呉服店を手伝い、店主として地域に貢献しました。

1997年、栃赤城は38歳で兄弟子とのゴルフ中に急に倒れ、急性心筋梗塞が原因でこの世を去りました。彼の死は、彼に親しんだすべての人々にとって衝撃的な出来事でした。

エピソードと人間性

栃赤城の人生には数々のエピソードがありました。彼は独特の負けず嫌いで、時にタニマチ（後援者）とは距離を置くこともあり、そのために年寄名跡の取得ができず廃業に至る苦い経験を持ちます。また、天皇にもファンが多く、小鉢を愛していたという意外な一面もありました。結婚を希望していたものの、生涯独身であった栃赤城は、最終的には家庭を持たないままでの生活を選びました。

趣味としてはバロック音楽の鑑賞を楽しみ、オーディオ機器にも詳しかった彼は、知的な趣味の持ち主でもありました。彼の取り組みや生活、そして不屈の精神は、多くの人々にとってのインスピレーションとなっています。栃赤城の名は今も多くのファンの心に残り続けているのです。

もう一度検索