栖吉城

栖吉城跡

栖吉城は、現在の新潟県長岡市栖吉町に位置していた中世日本の山城です。古志長尾家の本拠として歴史に名を残しました。その築城時期は明確ではありませんが、永正年間（1504年～1521年）に古志長尾家の当主であった長尾孝景によって築かれ、それまで本拠としていた蔵王堂城から居城が移されたと考えられています。

古志長尾家の本拠として

越後国内で一定の勢力を持っていた古志長尾家にとって、栖吉城は重要な拠点でした。城は戦略的な位置にあり、古志郡一帯を支配するための中心的な役割を果たしていたと見られます。歴代の古志長尾家当主がここを居城とし、領国の経営にあたりました。

御館の乱における激動

戦国時代後期、上杉謙信の死後に上杉家で勃発した跡目争い「御館の乱」は、栖吉城の歴史に大きな転換点をもたらしました。古志長尾家は、上杉景勝を支持する上田長尾家（通称、上田衆）との長年の対立もあり、上杉景虎方に味方することを決めます。当時の城主であった上杉景信（古志十郎）は景虎方として戦場に赴きますが、居多浜の合戦で討死するという悲劇的な結果を迎えます。城主を失った栖吉城もまた落城し、これにより古志長尾家の嫡流は滅亡しました。

乱後の再編と古志長尾家の終焉

御館の乱終結後、上杉家の支配体制が再構築される中で、栖吉城および古志長尾家の旧臣たちは新たな運命を辿ることになります。かつて上杉謙信存命中に古志長尾家の名跡を継いでいた河田長親（ただし長尾姓は名乗らず）が、古志長尾家の旧臣たちを集め、「栖吉衆」として再組織化しました。彼らは上杉家の家臣団の中で独自の集団として位置づけられ、特に最前線での活躍が期待されていました。

しかし、その長親が越中松倉城で急死するという事態が発生します。最前線を任されていた状況での急逝は、後継問題を引き起こしました。嫡男の岩鶴丸が後継者として栖吉城に入りますが、若くして亡くなってしまいます。さらにその後、親戚にあたる河田親詮が河田家を継承しましたが、軍役が大幅に削減され、実質的に栖吉衆の一武将という立場に格下げされました。この一連の出来事により、古志長尾家はその名跡も含めて完全に滅亡したと言えます。

城の終焉

河田家が没落してからは、上杉景勝の直臣となった栖吉衆が番将として栖吉城を管理し、地域の警備にあたっていたと考えられています。しかし、慶長三年（1598年）、上杉家が豊臣秀吉の命令により越後から会津へと移封されることになると、それまで上杉家の支配拠点であった多くの城郭と同様に、栖吉城もその軍事的な役目を終え、廃城となりました。現在、城跡には遺構が残されており、往時を偲ばせています。

上杉謙信との縁

栖吉城にまつわる特筆すべき点として、戦国時代の名将、上杉謙信との深い縁が挙げられます。謙信の生母である虎御前（青岩院）は、この栖吉城主であった長尾房景、あるいは長尾顕吉とも伝わる人物の娘であるとされています。この血縁関係から、謙信がこの栖吉城で生まれたという伝説も語り継がれており、城の歴史に神秘的な彩りを添えています。

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