栗コーダーポップスオーケストラ

栗コーダーポップスオーケストラは、日本の音楽シーンで独特の存在感を放つインストゥルメンタルグループ、栗コーダーカルテットが、その活動の幅をさらに広げる際に使用する別名義のアンサンブルです。通常のリコーダー四重奏というユニークな編成で、様々なジャンルの音楽をリコーダーと素朴な楽器で奏でる彼らの世界観を土台としつつ、このポップスオーケストラ名義では、打楽器や鍵盤楽器の熟練した奏者たちが加わり、より厚みと色彩感のあるサウンドを実現しています。

この拡張された編成の核となるのは、栗コーダーカルテットのレギュラーメンバー四人です。リーダーとしてソプラノリコーダーや鍵盤ハーモニカ、エレクトリックベースなどを担当する栗原正己。アルトリコーダーを中心に、サクソフォーン、フルート、クラリネットといった木管楽器、さらにはハーモニカやタンバリンも操る川口義之。テナーリコーダーや様々なギター（フォーク、クラシック、スティール、エレクトリック）、ウクレレ、バンジョーなど多彩な弦楽器を奏でる近藤研二。そして、グレートバスリコーダーからチューバ、トロンボーン、トランペットといった低音管楽器、ハープや口琴まで担当する関島岳郎。彼ら四人の独創的な楽器選択と演奏スタイルが、ポップスオーケストラ編成においても独自の音楽性を支えています。

栗コーダーポップスオーケストラとしてのサウンドを特徴づけるのは、栗コーダーカルテットのメンバーに加わる打楽器と鍵盤楽器の奏者たちです。打楽器奏者の三沢泉は、ドラムセット以外のあらゆる種類の打楽器、例えば木琴、鉄琴（グロッケン）、マリンバ、ティンパニ、シンバル、トライアングル、カスタネットなどを駆使し、楽曲に豊かなリズムと音色を加えます。鍵盤奏者の斉藤哲也は、アコースティックピアノ、エレキピアノ、アコーディオン、ピアニカ、シンセサイザーなど幅広い鍵盤楽器を使用し、ハーモニーやメロディーラインに深みを与えます。さらに、ドラム担当のイトケンが加わることで、クイーカ、ウッドブロック、マリンバといった打楽器や、様々な効果音も取り入れられ、サウンド全体のダイナミズムとリズムの多様性が増します。

この大編成アンサンブルは、特にアニメーション作品のサウンドトラック制作においてその手腕を発揮してきました。代表的な仕事としては、人気アニメ『あずまんが大王』関連の楽曲が挙げられます。短編映画やTVシリーズのオリジナルサウンドトラックはもちろん、トリビュートアルバムやヴォーカルコレクションにも参加し、作品の世界観を彩る音楽を提供しました。また、漫画をアニメ化した『よつばと！』のイメージアルバムや組曲、そしてアニメ『ぺとぺとさん』のオリジナルサウンドトラックなども手がけており、これらの作品を通じて多くのリスナーにその存在を知らしめました。

作品のレコーディングにおいては、基本編成に加え、数多くの著名なミュージシャンがサポートメンバーとして参加しています。特にストリングスセクションは、桑野聖氏を中心に編成され、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスといった楽器が加わることで、リコーダーや他の楽器だけでは表現しきれない豊かな響きと情感がもたらされています。その他にも、トランペットや木管楽器（フルート、オーボエ、クラリネットなど）の奏者が参加し、楽曲のバリエーションを広げています。

栗コーダーポップスオーケストラは、栗コーダーカルテットの持つ親しみやすさと、大編成ならではの豊かな表現力を融合させたユニークな音楽プロジェクトです。アニメ作品を中心に、その温かくも時に遊び心あふれるサウンドは、聴く人に心地よい驚きと感動を与え、リコーダーが奏でる新たな音楽の可能性を示し続けています。

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