栗田博憲

栗田博憲（くりたひろのり）氏は、日本中央競馬会（JRA）美浦トレーニングセンターに所属していた元調教師である。1948年11月4日生まれ。

1972年、中山競馬場白井分場の成宮明光厩舎で調教助手としてのキャリアをスタートさせた。その後、1980年に調教師免許を取得し、自身の厩舎を開業した。初出走は同年10月、初勝利は翌1981年3月と順調な滑り出しを見せた。

栗田氏の調教師としての才能が開花したのは1987年である。日刊スポーツ賞金杯でトチノニシキが14番人気の低評価を覆して優勝、栗田氏にとって初の重賞制覇となった。同年、エリザベス女王杯ではタレンティドガールが、栗田氏の提案による積極的なレース運びで、当時、桜花賞と優駿牝馬の二冠を制したマックスビューティを破り優勝。これは栗田氏にとって初のG1競走制覇という大きな成果となった。

栗田厩舎からは多くの活躍馬が輩出された。代表的な管理馬として、エリザベス女王杯を制したタレンティドガール、安田記念を2回、天皇賞（秋）を1回制したヤマニンゼファー、高松宮記念を制したシンコウフォレスト、そして皐月賞を制したイスラボニータなどが挙げられる。これらの馬は、栗田氏の卓越した調教技術と馬への深い理解によって生み出された成果と言えるだろう。

栗田氏の調教師生活は順風満帆とは限らなかった。1999年には、シンコウシングラーの負担重量不足による失格という苦い経験もしている。これは鞍にパッドを付けずに装着したことが原因と推定され、栗田氏は日本中央競馬会から制裁を受けた。この事件は、調教師としての責任と注意義務の重要性を改めて認識させる出来事となった。

長年に渡る調教師生活の中で、栗田氏は1985年と1987年に優秀調教師賞を受賞するなど、その高い能力と実績を高く評価されてきた。

2019年2月28日、定年を迎え、調教師を引退した。長きに渡り、競馬界に多大なる貢献を果たした栗田氏の功績は、多くの競馬ファンに記憶されている。

栗田氏の門下からは多くの優秀な調教師や騎手が輩出されている。例えば、調教師の粕谷昌央氏、栗田徹氏、浅利英明氏は栗田厩舎で調教助手として経験を積み、後に調教師として活躍している。また、騎手の柴田大知氏は、栗田厩舎所属騎手として活躍した後、栗田氏の反対を押し切って結婚したため解雇され、一時的に関係が悪化したものの、後に和解し、再び栗田厩舎の馬の主戦騎手として活躍するなど、数々のエピソードを残している。

栗田博憲氏の調教師人生は、成功と挫折、喜びと苦悩を経験した、まさに波乱に満ちたものであったと言えるだろう。しかし、その経験すべてが、彼を優れた調教師へと成長させ、多くの名馬を育成し、競馬界の発展に大きく貢献したと言えるのではないだろうか。そして、彼の指導の下で育った人材たちが、現在も競馬界を支えているという事実が、栗田氏の偉大さを物語っている。

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