根香寺

根香寺：歴史と自然に包まれた四国八十八ヶ所霊場

香川県高松市中山町に位置する根香寺は、天台宗単立の寺院であり、四国八十八箇所霊場の第82番札所として広く知られています。青峰山の中腹、標高約365メートルに位置し、霊場の中でも10番目に高い場所にあります。正式名称は青峰山千手院といい、本尊は千手観世音菩薩です。紅葉の名所としても有名で、特に見頃時期には駐車場が混雑するほど多くの参拝客が訪れます。

歴史と伝説：空海と円珍、そして牛鬼

寺伝によれば、弘法大師空海が弘仁年間（810年～824年）にこの地を訪れ、五色台の五つの峰に金剛界の五智如来を感得し、密教の修行にふさわしい地と判断。青峰に「花蔵院」を建立し、五大明王を祀り護摩供を修法したと伝えられています。

その後、天長9年（832年）には円珍（智証大師）が訪れ、山の鎮守である市之瀬明神の化身の老翁から、蓮華谷の霊木で観音像を造り、観音霊場の道場をつくるよう告げられたとされています。円珍は千手観音像を彫像し、「千手院」を建立、安置しました。この霊木は香木であり、切り株から芳香を放ち続けたことから、花蔵院と千手院を合わせて「根香寺」と呼ばれるようになったと伝えられています。

その後、後白河天皇より勅願所となり栄えたものの、永正年間以降は海賊の襲撃を受け伽藍が焼失したと寺記に記されています。慶長年間には高松城主・生駒一正により復興され、寛文4年（1664年）には高松藩初代藩主・松平頼重により再興されました。この際に、真言宗から天台宗に改宗されています。

また、江戸時代初期には牛鬼が人や家畜に危害を加えていたという伝説があり、弓の名手であった山田蔵人高清が3本の矢で牛鬼を退治したと伝えられています。高清は牛鬼の角を根香寺に奉納し、菩提を弔ったとされ、現在もその角と牛鬼の姿を描いた掛け軸が寺宝として伝わっています。

見どころ：境内と文化財

根香寺の境内には、山門（仁王門）、本堂、大師堂、五大堂、六角地蔵堂、龍宮地蔵堂など、多くの建物や石像があります。本尊である千手観音立像は、桜材の一木造りで漆箔を施された平安時代の作とされ、国の重要文化財に指定されています。33年に一度の開帳となり、次回は令和18年（2036年）の予定です。

その他にも、香川県指定有形文化財である五大明王像や木造智証大師坐像、樹齢1600年ともいわれた白猴欅（枯死後保存）、はらくわり地蔵、水かけ地蔵、役の行者石像、牛頭観音石像、牛鬼像など、多くの見どころがあります。境内には松平頼重の命日と刻まれた岩があり、その下に頼重の木像が埋められているという伝承もあります。

また、白峯寺から根香寺に至る遍路道の一部も国の史跡に指定されています。参道には摩尼輪塔や下乗石、石畳などが残り、歴史を感じさせる風景が広がっています。

アクセス

鉄道：JR四国予讃線鬼無駅より約5.5km
道路：香川県道180号鴨川停車場五色台線、高松自動車道高松檀紙IC/高松西ICより約11.3km

根香寺は、歴史、文化、自然が融合した、魅力あふれる霊場です。四国遍路の旅はもちろん、紅葉の季節に訪れてみるのも良いでしょう。

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