桜庭直綱

桜庭直綱

桜庭直綱（さくらば なおつな）は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、南部氏の家臣として知られています。櫻庭直綱とも表記されます。彼は赤石館（現在の青森県三戸郡南部町赤石字舘）の館主であり、2,000石を領していました。

生涯

桜庭氏は佐々木氏流六角氏の支流を自称しており、南部氏初代南部光行が奥州に下向する以前からの譜代の家柄でした。三上氏、安芸氏、福士氏と共に南部四天王と称されるほどの重鎮でした（『南部根元記』）。

初めは佐々木与三郎安房と名乗っていましたが、天正10年（1582年）に元服する際、主君である南部信直から「直」の一字と来国次の太刀を賜り、直綱と改名しました（『宝翰類聚』）。

九戸政実の乱での活躍

天正19年（1591年）に発生した九戸政実の乱では、主君の意を受けて領内の諸豪族の説得に奔走しました（『二戸川嶋家文書』）。

岩崎一揆での武功

慶長5年（1600年）の岩崎一揆では、和賀忠親の反乱鎮圧のため、馬上の侍大将として70人の部隊を率い、南部軍の主力として戦いました（『聞老遺事』岩崎御出陣人数定）。この戦いの出陣軍令書には、北信愛、楢山五佐衛門直隆、直綱の連盟があり、この頃には南部家中で重要な地位を確立していたことがうかがえます。

阿曽沼広長討伐

慶長6年（1601年）、主君の命を受けた直綱は、伊達氏と結んだ遠野地方の豪族、阿曽沼広長を討つため350人の部隊を率いて阿曽沼軍と戦い、これを打ち破りました（『南部史要』）。

幕府との関わり

慶長17年（1612年）には、徳川秀忠が仙洞御所造営の普請を命じるため江戸の南部藩邸を訪れた際、直綱も南部利直、重直、八戸直政、北直継と共に会談に参加しています。

慶長19年（1614年）の大坂冬の陣では、南部軍は片桐且元の居城である茨木城の破却を行いました。しかし、北信景の大坂城籠城事件があったためか、大坂夏の陣では参陣を許されませんでした。

家老就任と晩年

元和元年（1615年）に家老に就任し、晩年は政務や財務の取締りも行いました（南部藩『御系譜』）。元和2年（1616年）には、閉伊郡花輪村に後の盛岡藩主となる南部重信が生まれた際、その確認のため「御検視」として派遣されました（『小本家記録』）。

元和6年（1620年）に亡くなり、家督は長男の直際が継ぎました。岩手県宮古市長根にある長根寺の櫻庭家累代の墓所（長根寺桜庭氏墓所）には、直綱の墓碑が現存しています（宮古市指定史跡）。

北信景の大坂城籠城事件と幕府の追及

北信景の大坂城籠城事件について江戸幕府から諮問された際、南部利直は本多正純、安藤直次を通して駿府の徳川家康と江戸の徳川秀忠宛に弁明の書状を送りました。その中で直綱の父は又重雅楽丞なる人物であるとして、信景とは異父兄弟であるかのように記述しています。この際、処分を避けるために櫻庭家の系図を詐称、隠蔽した疑惑があり、後に編纂された櫻庭家系図と他の南部家の文書では、父光康の活動時期や妻の名前が異なっています。

しかし、『祐清私記』によると、家康は「わざわざ遠い奥州の地から参陣したのは叛意の無い表れである」として、北家や櫻庭家に対する処分は行わなかったとされています。

参考文献

岩手県編纂『岩手県史』第三巻中世篇2 杜陵印刷、1961年

関連項目

赤石館
南部氏
北氏

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