茨木城

茨木城：戦国時代の激動を刻んだ城跡の物語

大阪府茨木市に存在した茨木城は、その歴史の大半が謎に包まれた、興味深い城郭です。現在、城跡は宅地化が進み、往時の面影を偲ばせる遺構は、茨木神社に移築されたとされる搦手門や、茨木小学校に復元された櫓門など僅かしか残っていません。しかし、その短い断片から垣間見える茨木城の歴史は、戦国時代という激動の時代を象徴するドラマに満ち溢れています。

築城から茨木氏の隆盛

茨木城の築城年代や経緯は明確には解明されていませんが、楠木正成、安富氏、福富氏のいずれかによって築城されたとする説が伝わります。文献に初めて登場するのは、応仁の乱（1467年）の際に、東軍の安富元綱方に属した野田泰忠が陣を敷いた記録です。この頃には既に茨木氏が台頭しており、文安年間（1444年～1449年）の『文安年中御番帳』には、茨木氏の奉行が名を連ねています。

茨木氏はその後勢力を拡大し、茨木長隆の代には細川高国と細川晴元の間の対立で晴元方につきます。天文7年（1538年）には守護代にまで上り詰めましたが、天文17年（1548年）からの晴元と三好長慶の対立に巻き込まれ、天文18年（1549年）の江口の戦いで敗北、茨木長隆は戦死したと推測されています。

織田信長、荒木村重、そして滅亡

その後、茨木重朝が室町幕府の御家人として織田信長に臣従。信長の摂津入国（永禄11年、1568年）後も本領を安堵されました。重朝は織田方として数々の戦に参加しますが、元亀2年（1571年）8月28日の白井河原の戦いにおいて戦死。この敗戦をきっかけに、荒木村重の軍勢が茨木城を攻撃し、激しい攻防の末、落城しました。この戦いで茨木氏は滅亡し、300名以上の犠牲者を出したと伝えられています。

中川氏、片桐氏による支配と廃城

茨木城はその後、荒木村重の子・村次が一時的に城主となりますが、実質的な支配は中川清秀が行い、城の改修・拡張が行われました。天正5年（1577年）には清秀が正式に城主となりますが、天正6年（1578年）の有岡城の戦いにおいて村重が織田信長に反旗を翻すと、縁故から村重側に付いたものの、後に織田方に寝返ります。本能寺の変後、中川清秀は豊臣秀吉に仕えましたが、賤ヶ岳の戦いで戦死しました。その後、茨木城は豊臣秀吉の直轄地となり、安威了佐や河尻秀長が代官として城を守りました。

関ヶ原の戦い後、慶長6年（1601年）には片桐且元、貞隆兄弟が茨木城主となります。しかし、方広寺鐘銘事件をきっかけに且元は豊臣家と袂を分かち、大坂夏の陣後に竜田藩主となりました。一国一城令の発布により、元和2年（1616年）に茨木城は解体され、約200年の歴史に幕を閉じました。

城跡と周辺環境

茨木城は、現在では京阪神地区の衛星都市となった茨木市の中心地に位置していました。城郭の正確な規模は不明ですが、東西220m、南北330mほどの範囲であったと推測されています。現在では城跡は宅地化されており、遺構はほとんど残っていません。茨木神社の石垣や茨木小学校に復元された櫓門などが、わずかに往時の面影を伝えています。西側にはかつて茨木川が流れ、堀の役割を果たしていたと考えられていますが、昭和24年（1949年）に廃川となり、現在は緑地として整備されています。

天守の存在を示す文献は確認されていませんが、『わがまち茨木（城郭編）』では、本丸跡は現在の茨木小学校周辺と推測されています。また、茨木城の門は廃城後、各地に移築されたと伝えられています。

アクセス

茨木城跡へのアクセスは、JR京都線茨木駅または阪急京都本線茨木市駅から徒歩約15分です。車の場合は名神高速道路茨木ICから国道171号を利用し、近隣には市営中央公園駐車場があります。

茨木城は、その歴史の多くが謎に包まれているものの、戦国時代の激動を肌で感じることのできる貴重な史跡です。わずかに残された遺構や史料、そして豊かな想像力を駆使することで、かつてこの地に存在した城の姿を思い描くことができるでしょう。

もう一度検索