植込み型除細動器

植込み型除細動器（ICD）について

植込み型除細動器（ICD）は、心室頻拍や心室細動といった致死的不整脈の治療を目的とした医療機器であり、患者の体内に植え込まれる形で使用されます。このデバイスは、心臓の異常を迅速に感知し、事前に設定された治療を実施することで、突発的な心停止から患者を守る重要な役割を果たします。

ICDの仕組み

ICDは、体内にある電池で動作し、外部からの電源供給は不要です。植え込まれた患者は、突然死のリスクから解放されます。このデバイスは、致死性不整脈が発生すると即座に診断し、必要な治療を実施します。ICDは、心不整脈を根治するものではありませんが、他の治療法が難しい患者に対しての有効な選択肢となります。

AEDとの違い

自動体外式除細動器（AED）は公共の場に設置され、周囲の人が心肺停止の患者に救命処置を施すための装置です。一方、ICDはすでに患者の体内に埋め込まれているため、他人の助けを受けることなく自動的に治療を行います。

WCDとの相違

着用型自動除細動器（WCD）は、体外に装着するタイプの装置で、装着中に心電図を監視し、異常があれば治療を行います。これに対してICDは完全に体内に埋め込まれており、常に患者の状態を把握しながら、自動的に治療を提供します。

ICDの分類と構成

ICDには3つの主なシステムがあります。1つは、経静脈ICDシステムで、心臓内にリードを留置し、電気的ショックを通して救命措置を行います。2つ目は皮下植込み型除細動器（S-ICD）で、体内に心臓や血管に触れない形で植え込まれます。3つ目は、両室ペーシング機能付き植込み型除細動器（CRT-D）で、心室の機能改善も行える高度なシステムです。

ICD本体や関連リード（ICDリード、心房リード）が体内に植え込まれ、治療を行うための基本構成が整っています。ICD本体は、電池や回路が内蔵され、重さは約70gで、小型のスマートフォンほどの大きさです。

手術と施設の要件

ICDの植込み手術は不整脈専門医のいる施設で行われ、通常は局所または全身麻酔が施されます。手術は約1時間から数時間かかり、ICD本体を収納するためのスペースを皮下に確保し、心臓へ導くリードを適切な静脈を通じて挿入します。現在、日本には471のICD植込み認定施設が存在します。

設定と治療機能

ICDには、抗頻拍ペーシング、カルディオバージョン、除細動治療の3つの治療法が設けられており、手術後でも体外から設定変更が可能です。これらの機能により、心室の電気的異常に対して迅速かつ効果的な治療が行われます。

患者への影響

ICDを植え込むことによって、突然死のリスクが低減し、患者は心臓の健康を維持する助けとなります。ただし、ICDは致死性不整脈そのものの予防にはならないため、引き続き他の治療と併用しながら、定期的な管理や医師との相談が重要です。

沿革

• - 1980年: 世界初のICD植え込みが実施
• - 1990年: 日本でICD臨床試験が開始
• - 1996年: 日本でICDが健康保険適用
• - 2006年: CRT-Dの保険適用が開始
• - 2016年: S-ICDの保険適用が開始
• - 2021年: 日本国内で約6000台のICD植え込み手術が行われた

著名人の事例

ディック・チェイニー元副大統領や作家のなかにし礼、デンマークのサッカー選手クリスティアン・エリクセンなど、多くの著名人がICDを植え込んでいます。これらのケースは、ICDが多様な背景において重要な医療機器であることを示しています。

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