楠本端山

楠本端山：幕末・明治期の儒学者

楠本端山（くすもと たんざん、1828年2月29日 - 1883年3月18日）は、江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した儒学者です。名は確蔵、のちに後覚、字は伯暁、端山と号しました。弟は同じく儒学者である楠本碩水。

生涯

肥前国彼杵郡針尾島葉山（現在の長崎県佐世保市針尾中町）で、平戸藩の在郷藩士の長男として生まれました。幼少の頃から学問を好み、地元の近藤新右衛門に師事し、論語や大学などの素読を学びました。15歳で平戸藩の藩校である維新館に留学し、5年間学びました。

維新館での修学後、平戸藩に出仕し計司局に勤務する傍ら、九州各地を旅して広瀬淡窓や草場佩川など、当時著名な学者たちと交流しました。藩で重きをなしていた学者、葉山凱軒に才能を認められ、1851年（嘉永4年）に江戸へ上り、佐藤一斎や大橋訥庵に師事しました。

1853年（嘉永6年）、父の病のため平戸へ帰郷。直ちに維新館の教授に任ぜられますが、藩校の教育内容改革を巡り、藩校内や藩の上層部と対立し、教授を辞して針尾へ帰郷しました。約8年間を針尾島で過ごした後、藩主である松浦詮からの度重なる懇請を受け、再び平戸に出て侍講として藩主へ儒学を講義し、藩政にも参画。藩論を儒教を基とする尊王へと導きました。

1867年（慶応3年）、倒幕親征のため大阪に滞在していた明治天皇に、松浦詮が大学を進講した際、天皇の好評を得たことから、その教授である端山の名も全国に知られるようになりました。維新後、平戸藩権大参事に就任。「猶興書院」を開き学制を改め、税を軽くして民生の安定を図るなど、藩政改革に尽力しました。この時期、西郷隆盛を始めとする政府要人へ、しばしば手紙で建言を行っています。

廃藩置県により平戸藩が平戸県、さらに長崎県へと改まる中で、端山の意見は次第に容れられなくなり、健康状態も優れなかったことから、1881年（明治14年）4月に官を辞し、再び針尾島へ帰りました。翌1882年（明治15年）8月、その地に弟の碩水と共に「鳳鳴書院」を開設し、子弟の教育に尽力しました。端山の教えを請うため、全国から多くの門人が集まり、その数は400名に達したと言われています。籠手田安定、宮崎八郎、沖禎介、菅沼貞風、菅沼周次郎など、後に社会で活躍する人材を数多く輩出しました。

漢学者の三島中洲は、北宋期の儒学者である程顥・程頤の兄弟になぞらえ、楠本端山・碩水兄弟を「西海の二程」と称賛しました。

1883年3月18日、中風により死去。享年56歳。

遺跡

旧宅は現在も佐世保市針尾中町に存在し、旧宅南方にある儒教式の墓所と合わせて「楠本端山旧宅と楠本家墓地土墳群7基」として、1968年（昭和43年）12月23日に長崎県史跡に指定されています。

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