緑色片岩

緑色片岩とは

緑色片岩（りょくしょくへんがん、Greenschist）は、変成岩の一種であり、特に広域変成岩に分類されます。結晶片岩の一種でもあり、その名の通り緑色を帯びた外観が特徴的です。岩石学や鉱物学の分野では、厳密な定義とやや広い意味で使われることがあり、日本では後者の用法が一般的です。

生成過程

緑色片岩は、玄武岩などの火成岩や凝灰岩、珪質堆積岩などが、比較的低温・低圧の環境下で広域変成作用を受けることで生成されます。変成岩の中では変成度合いが低いものに分類されます。一般的な生成温度は摂氏200℃から450℃、圧力は2キロバールから10キロバール程度とされています。この変成作用により、岩石中の鉱物が再結晶し、片理と呼ばれる面状構造が発達します。

特徴

緑色片岩の主な特徴は、以下の通りです。

緑色の外観: 緑泥石、蛇紋石、緑簾石などが含まれており、これらが緑色の発色に関与しています。
片理構造: 再結晶作用によって、鉱物がうろこ状や板状に配列し、縞模様のような面状構造（片理）を形成します。この構造は、見た目の美しさを生み出す要因の一つです。
多様な成分: 主成分のほかに、石英、正長石、滑石、炭酸塩鉱物、角閃石、パンペリー石、曹長石なども含まれます。源岩が石灰質の場合には方解石の割合が増えます。変成時の圧力が高かった場合は、藍閃石やローソン石を含むこともありますが、厳密にはこれらは青色片岩に分類されます。

緑色片岩は、変成作用の度合いによって、結晶や片理の少ない「緑色岩」と呼ばれるものや、緑泥石の割合が高い「緑泥片岩」と呼ばれるものも存在します。

岩石学的な定義

変成岩研究の第一人者であるペンティ・エーリス・エスコラが提唱した「緑色片岩相」という概念が、厳密な定義の基礎となっています。この概念では、低温・中圧から高圧の環境下で生成されたものを緑色片岩と呼びますが、必ずしも緑色の結晶片岩がこの環境で生成されるわけでもなく、また、緑色に見える結晶片岩が常にこの環境で生成されるとも限りません。そのため、日本では緑色に見える結晶片岩を通称として緑色片岩と呼ぶ場合があります。

分布

緑色片岩は、世界各地で産出されており、日本では以下の地域に広く分布しています。

三波川変成帯: 中部地方、近畿地方、四国地方を横断し、九州の佐賀県まで続く変成岩帯で、黒色片岩とともに緑色片岩が豊富に産出します。
三郡変成帯:
阿武隈変成帯:

これらの地域では、緑色片岩はその美しさから銘石として珍重され、庭石などに利用されてきました。特に、群馬県の三波石や埼玉県の秩父青石は有名ですが、現在は枯渇のため採掘が禁じられています。

各国での利用

ヨーロッパ: 石斧の材料として利用されており、特にラングデイル式斧工場の名で知られています。
北米: 先住民が石斧や「セルト」と呼ばれる道具の材料として利用しました。ウッドランド期には交易品としても扱われ、ホープウェル文明では数千キロメートル離れた場所から見つかることもあります。ミシシッピ文化期には、モードヴィル遺跡の勢力が流通を支配していました。

まとめ

緑色片岩は、美しい外観と多様な用途を持つ変成岩です。その生成過程や成分、産地を知ることで、地球の歴史や文化との関わりを理解することができます。

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