極運動

極運動とは

極運動とは、地球の自転軸に対して地球の本体が移動する現象を指します。地球の自転軸そのものも、歳差や章動といった現象によってわずかに動いていますが、極運動はこれとは異なるものです。

極運動には、主に以下の2つの周期性を持つ運動があります。

チャンドラー極運動: 約14ヶ月周期で発生する運動
周年極運動: 約12ヶ月周期で発生する運動

これらの運動は互いに干渉し合い、約6年周期で振幅が増減するという特徴があります。

極運動によって、地理極の位置はわずかに変動します。観測データによると、北極は半径約10メートルの範囲内で、円に近い軌跡を描きながら移動を続けています。このため、見かけ上、星の位置は最大で0.3秒角程度ずれて観測されます。

極運動の歴史

極運動の存在は、1756年にレオンハルト・オイラーによって初めて理論的に示されました。オイラーの理論では、極の位置は約305日の周期で変化するとされていました。

その後、多くの学者がこの現象の観測に挑戦し、19世紀末にドイツのフリードリッヒ・キュストナーとアメリカのセス・チャンドラーによって、初めて観測に成功しました。キュストナーは星の位置の観測から、チャンドラーは200年前の古い星の位置の記録から、それぞれ独立に同じ結果を導き出しました。しかし、チャンドラーが得た周期は約428日であり、オイラーの理論とは異なる結果であったため、当時多くの人々を驚かせました。この428日周期の極運動は、チャンドラー極運動と呼ばれるようになりました。

オイラーの理論の誤りは、地球を剛体と仮定したことにありました。後に、サイモン・ニューカムが地球を弾性体と仮定すれば、観測値と一致することを証明しました。

極運動の観測

極運動は複雑な運動であり、その観測は非常に重要です。現在では、国際地球回転・基準系事業（IERS）が、世界中の観測所の協力を得て、極の動きを監視しています。

IERSが発表している北極の位置のプロット図を見ると、真の北極が約428日の周期で反時計回りに移動していることがわかります。将来の極の位置をある程度予測することはできますが、正確な値は実際に観測を行うことでしか把握できません。

極の位置は、北極付近のある点を原点とするxy座標系で表されます。この原点は、国際緯度観測事業（ILS）が1900年から1905年までの6年間の観測によって得られた北極の平均位置であり、慣用国際原点（CIO）と呼ばれています。x軸は経度0度の経線、y軸は西経90度の経線です。

極運動の原因

極運動の原因については、様々な要因が考えられています。現在最も有力な説は、以下の通りです。

1年周期の成分: これは、地球表層の大気や水圏における季節変化に伴う質量分布の変化や、角運動量の変化によって引き起こされる強制振動です。
1.2年周期（約435日）の成分: これは、地球システムの力学的な特性を反映した固有周期であり、外力によって励起されない限り観測されない自由振動です。

参考文献

極運動と木村のZ項、チャンドラー極運動の謎 — 日本測地学会 CD-ROMテキスト測地学Web版

関連項目

Z項
* 木村栄

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