榊田清兵衛

榊田清兵衛：地方発展に尽力した政治家

榊田清兵衛（さかきだ せいべえ）は、元治元年（1864年）に出羽国仙北郡大曲村（現在の秋田県大仙市）に生まれ、昭和4年（1929年）に66歳で没した政治家です。大地主の家に生まれ、幼少期から学問を好み、地域社会の発展に貢献しました。

生い立ちと初期の活動

榊田は、幼名を清蔵といい、地元の名士である神沢繁らに師事し、自宅に講習義塾を設立するほど学問に熱心でした。14歳頃には大曲小学校の助教となり、青年会にあたる大曲談話会を設立し、地域の主要な行事や政治の動きを決定する中心的な役割を果たしました。また、仙北改良社を設立し、産米の改良や乾田馬耕、耕地整理などを奨励し、農業の発展にも尽力しました。

地方政治家としての活躍

明治21年（1888年）に大曲村会議員に当選し、政界への第一歩を踏み出しました。その後、県会議員、仙北郡会議員を歴任し、道路の開削や病院の設置、郡役所の建築などに尽力しました。明治29年（1896年）の陸羽地震（六郷地震）の際には、国や県に働きかけ、被災地の救済・復興に大きく貢献しました。県会議員としては、県立図書館の設立や国立種馬所の誘致、奥羽線の全通促進運動、秋田育英会の創立など、教育・文化の振興にも力を注ぎました。また、大曲銀行や大曲米穀取引所を設立し、地域経済の発展にも貢献しました。

中央政界への進出

明治41年（1908年）、「川上弁護士邸焼き打ち事件」をきっかけに衆議院議員選挙に出馬し、初当選を果たしました。帝国議会では立憲政友会に所属し、請願委員長として各種法律案の審議に携わりました。特に、港湾改良、全国鉄道速成、学制改革、河川改修費増額などに関する建議案を提出し、その実現に尽力しました。

床次竹二郎との連携

原敬の死後、榊田は床次竹二郎と政治行動を共にし、床次内閣実現のために奔走しました。政友会を脱党し、政友本党を結成、その後、立憲民政党、新党倶楽部と所属を変えながらも、一貫して地方の利益を代表する政治家として活動しました。

盛曲線問題と地方問題解決

榊田は、盛曲線（田沢湖線）の敷設に尽力し、建設同盟会を結成して政府や議会に働きかけました。その結果、大正8年（1919年）に軽便鉄道として両院で可決成立し、大曲～角館間が開通しました。また、最上川改修に伴う赤川流域の附帯事業において、周辺住民の反対を押し切って改修計画を更改させ、農民救済に当たりました。その他、盛岡～宮古間の鉄道路線実測や関東大震災後の復興事業にも尽力し、地方の発展に大きく貢献しました。

地下鉄の開通への貢献

東京地下鉄の建設に際しては、実業家の早川徳次を支援し、技術陣をロンドンに派遣して実情を調査させ、その報告書を政府に提出しました。その結果、早川らに建設許可が与えられ、東京地下鉄道会社によって浅草～上野間が開業しました。早川は後に「榊田先生がいなかったら、日本の地下鉄は生まれなかった」と述懐しています。

最晩年と死

最晩年は政友会最高顧問に就任し、田中義一総裁の急死後には床次擁立のために画策しましたが、志半ばにして昭和4年（1929年）に逝去しました。その功績を称えられ、正五位、勲三等旭日中綬章が追贈されました。墓は安養寺に、祈念碑は大川寺に建てられています。

榊田清兵衛は、地方の発展と国政に尽力した政治家として、その名は長く記憶されるでしょう。

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