槻岡寺

新潟県南魚沼市に位置する槻岡寺（きこうじ）は、水龍山と号する曹洞宗の寺院です。慶長元年（1596年）に開かれたと伝えられており、古くからこの地域の信仰の中心の一つとして栄えてきました。本寺である雲洞庵の別院として創建された歴史を持ち、現在では上田観音札所の第五番札所としても多くの参拝者を受け入れています。また、金城山への登山道である槻岡寺観音山コースの起点にあたるため、登山客にも親しまれており、里山にはこぶし遊歩道も整備され、自然豊かな環境の中にあります。

槻岡寺の創建は、慶長元年（1596年）とされています。寺の開基は、この地の有力者であった月岡外記（つきおかげき）です。記録によれば、槻岡寺が開かれる以前にも、月岡外記の屋敷の一角には庵が設けられ、およそ百年にわたり住職がいたと伝えられています。正式な寺院としての開山は、本寺にあたる雲洞庵の第十九世住持である一永長尊大和尚が務められました。一永長尊大和尚は万治3年（1660年）に示寂されています。

寺の歴史において特筆すべきは、江戸時代末期から明治時代初期にかけて、わずか十年足らずの間に二度にわたって大きな火災に見舞われたことです。この度重なる火災により、残念ながら江戸時代の記録や資料の多くは失われてしまい、当時の詳細は明らかではありません。しかし、この火災を経て、寺の山号は現在の「水龍山」に改められたとされています。

明治以降、寺は復興への道を歩みます。第二十三世住職である祖麟禅英大和尚は、明治24年（1891年）に長岡で生まれ、大正5年（1916年）10月に槻岡寺に入られました。続く第二十四世住職、重興祖亮英大和尚は大正9年（1920年）7月16日のお生まれで、本寺である雲洞庵で厳しい修行を積まれました。先代住職が健康上の問題を抱えていたため、昭和26年（1951年）に若くして槻岡寺の住職となられ、平成22年（2010年）に退董されるまで、長きにわたり寺を護られました。

第二十五世住職の大喝英信大和尚は、昭和24年（1949年）10月にお生まれになり、仏教系の大学ではなく早稲田大学教育学部で学ばれたという異色の経歴をお持ちです。平成13年（2001年）には神奈川県小田原にある大雄山最乗寺にて修行され、平成22年に槻岡寺の住職に任命されましたが、平成28年（2016年）に遷化されました。

現在の第二十六世住職は、自樂勉悠和尚です。昭和58年（1983年）11月に静岡市で生まれ、静岡大学を卒業後、大本山永平寺や秋葉総本殿可睡斎といった名刹で修行を積まれました。平成30年（2018年）6月9日に先代住職の法要と併せて晋山結制式・法戦式が執り行われ、正式に住職に就任されました。自樂勉悠和尚は、就任以来、地域に開かれた寺を目指して様々な新しい取り組みを進めています。平成30年からは「水龍さんの縁日」と称する催しを始め、永代供養塔の建立も行いました。令和2年（2020年）5月には、寺の本堂を会場としたお葬式を開始し、同年8月19日からは座禅会も定期的に開かれています。私生活では亀倉里恵さんと入籍され、令和5年（2023年）12月23日には長男も誕生されるなど、家族とともに歩んでおられます。

寺の宝として、南魚沼市の指定文化財となっている木造千手観音像があります。この仏像は、昭和56年（1981年）11月24日に市の文化財に指定されており、歴史的な価値を持つ重要な存在です。境内や周辺には、金城山をはじめとする魚沼連峰の山々が連なり、豊かな自然に囲まれています。近隣には雲洞庵や龍泉院など、歴史ある寺院も点在し、地域の文化的な深さを感じさせます。

槻岡寺への交通アクセスは、公共交通機関、自動車ともに比較的便利です。鉄道を利用する場合、上越新幹線の越後湯沢駅で下車後、上越線または北越急行ほくほく線に乗り換えて六日町駅へ向かいます。六日町駅からは南越後観光バス沢口行に乗車し、約20分で金清坊バス停留所に到着します。バス停からは徒歩で約20分です。自動車を利用する場合は、関越自動車道の塩沢石打インターチェンジから新潟県道28号塩沢大和線を経由して約20分で寺に到着します。また、六日町駅角からは市民バスの上田・泉田コースも利用可能で、約25分で寺の近くまでアクセスできます。

歴史の中で幾度かの困難を乗り越え、現代においても地域の信仰と文化を支える槻岡寺は、自然豊かな南魚沼の地で静かにその存在感を示しています。新しい住職のもと、地域に開かれた活動も積極的に展開されており、今後もその歴史を積み重ねていくことでしょう。

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