権助

落語の愛すべきキャラクター「権助」

「権助（ごんすけ）」は、古典落語に登場する奉公人の名前です。小僧の定吉と並び、落語に欠かせないキャラクターとして親しまれています。特に江戸落語でよく登場します。

権助という名前について

もともと「権助」という名前は、特定の個人を指すものではなく、地方出身の商家で使用されていた飯炊きなどの使用人を指す普通名詞でした。落語に登場する権助も、地方から江戸に出てきた田舎者で、奉公先では飯炊きや下男として働いています。

権助の人物像

権助の一人称は「おら」、語尾には「～だべ」「～だんべえ」といった田舎言葉を使うのが特徴です。頭が鈍く、気が利かない面もありますが、その一方で、朴訥で辛抱強いというステレオタイプな田舎者として描かれています。真面目な性格で、主人には忠実です。中には、「奉公人が三日ももたずに逃げ出す」というような人使いの荒い主人に、3年間も勤め続ける権助もいます。

落語では、権助がドジを踏んでしまい、その対処が話の中心となることが多いです。同じようにドジを踏むキャラクターとして与太郎がいますが、権助と与太郎ではドジを踏む理由が異なります。権助は真面目すぎるゆえに融通が利かずドジを踏んでしまうのに対し、与太郎は不真面目さから手を抜いてドジを踏んでしまいます。

権助が登場する主な落語

権助が登場する落語は数多くあります。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

『権助芝居』：芝居の代役を頼まれた権助が、おかしな演技で大騒ぎを繰り広げます。
『権助魚』：浮気をしている主人に意見をするものの、結局は浮気の片棒を担がされてしまいます。
『権助提灯』：浮気性の旦那の提灯持ちを務めます。
『蒟蒻問答』：八五郎と共演し、八五郎が坊主を務めるお寺の下男を演じます。
『しの字嫌い』：権助の無神経な性格を矯正しようと考えた隠居と知恵比べをします。
『化け物使い』：非常に人使いの荒い隠居の元で奉公することになります。
『一つ穴』：旦那の浮気を疑う奥方から監視役を命じられ、浮気を報告したところ、修羅場に巻き込まれてしまいます。
『木乃伊取り』：遊郭に入り浸って帰ってこない若旦那を連れ戻しに行きます。
『和歌三神』：主人と一緒に雪見に出かけます。
『王子の幇間』：幇間の平助に隠しておきたかった過去を暴露され、思わず奴さんの頭を叩いてしまいます。
『かつぎや』：超がつくほど縁起を担ぐ旦那の言動に、物騒な言葉を連発して怒らせてしまいます。
『宗論』：「浄土真宗」の信者である主人と、「キリスト教」の信者である若旦那の親子喧嘩に仲裁に入ります。
『味噌蔵』：「ケチの標本」のような赤螺屋ケチ兵衛という人に仕えています。

権助というキャラクターの魅力

権助は、田舎者ならではの朴訥さや、真面目すぎるが故の融通の利かなさが、どこか憎めない愛嬌のあるキャラクターです。落語の中では、ドジを踏んだり、周りの人に振り回されたりと、様々な騒動を起こしますが、その度に観客を笑顔にしてくれます。権助は、落語の世界に欠かせない、魅力的なキャラクターの一人と言えるでしょう。

参考文献

北村一夫 『落語人物事典 上』 社会思想社〈現代教養文庫〉、1978年。
北村一夫 『落語古典語典』 柏書房、1982年。
安藤鶴夫 『落語国・紳士録』 平凡社、2000年。ISBN 4-582-76352-9
* 高橋啓之 『落語登場人物辞典』 東京堂出版、2005年。ISBN 978-4-490-10667-1

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