横浜銀行協会

一般社団法人横浜銀行協会は、神奈川県内に本支店を置く銀行が会員となっている団体であり、手形交換所の運営、防犯や消費者保護に関する業務、そして地域経済の活性化を目的とした事業を推進しています。また、同協会が所有する建築物も、その歴史とともに重要な存在となっています。

歴史

協会の起源は1881年（明治14年）に、横浜に拠点を置く銀行間の親睦団体として発足しました。当初は年1回程度の活動でしたが、1885年には毎月会合を開く「月曜会」へと発展。1894年4月には規約を持つ組織「横浜銀行集会所」となり、弁天通4丁目に集会所を設けました。

その後、手狭になったため本町6丁目に敷地を移し、1905年4月に二代目集会所を着工しました。同年12月に完成し、翌年1月に開所式を行いました。この二代目集会所は、遠藤於菟の設計による煉瓦造りの地上2階・地下1階の建物で、白い煉瓦タイルで外壁が仕上げられ、窓や庇にアーチを設けるなど、当時のヨーロッパ建築の影響を色濃く反映したデザインでした。

しかし、1923年（大正12年）の関東大震災で大きな被害を受け、取り壊されることとなりました。その後、1924年9月には太田町3丁目に三代目集会所が完成しますが、これは木造の応急的な建物でした。

現在の四代目集会所は、本町通りと関内大通りが交わる、関内地区の主要な交差点に位置しています。1936年（昭和11年）7月10日に落成式が行われました。第二次世界大戦後の1945年から1952年までは進駐軍に接収され、将校クラブとして使用されました。接収解除後、1958年に組織名称を「横浜銀行協会」と改めています。

建築

現在の建物である四代目集会所の設計は、大熊喜邦と林豪蔵が担当しました。大熊は官庁や議事堂の建築で知られ、建築学会の会長も務めた人物です。実施設計は大熊の娘婿である林が手掛けたとされています。施工は清水組で、同社は二代目集会所の建設と、本建築の1965年の増築工事にも関わっています。

南西側の正面は、地下から3階まで続く7本の柱形と、左側3本分の玄関ポーチ、その脇の六角形の窓が特徴的です。南面と西面は擬石ブロック張り、その他はモルタル塗りの洗い出し仕上げで、石造りのような外観を演出しています。3階のコーニスや隅部、正面の柱形の頂部、西面3階窓のペディメント、玄関ポーチの庇の側面などには、植物や壺、幾何学模様などのクラシックな意匠のテラコッタが装飾として用いられています。

建物はメートル法で設計され、幅約25m、奥行き約22mの正方形に近い平面を持ちます。柱割りは、奥行き方向が正面から9.8m、5m、7m、間口方向が両端4.65m、中央3スパンが各4.6mとなっています。奥行き方向の中央を廊下、奥の中央を主階段室、正面寄りの最も広い部分を大食堂などに充てる間取りは、二代目集会所の配置を一部継承しています。

しかし、二代目の中央にあった玄関は、本建築では正面左から2番目のスパンに設けられ、玄関ポーチが追加されています。1階には玄関の西側に応接室と待合室、東側に大談話室、中廊下を挟んで北側西に受付とクロークルーム、左側に事務室が配置されています。2階は南側半分が大食堂、北東に小食堂、その西側に小談話室があります。3階には南東側にビリヤード室、その西側に特別室、北東側に囲碁将棋室、その西側に図書室と控室が設けられています。特に特別室は小会議室としても使われ、最も豪華な内装となっています。地下には厨房、従業員室、理髪室、ボイラー室、変電室、控室、倉庫が配置されています。4階は1965年の増築部分で、手形交換所が設けられました。この際、塔屋は撤去され、屋内の扉を防火戸に変更した程度で、既存部分には大きな変更は加えられていません。

内装は、部屋の用途に応じて床材がトラバーチン、寄木張りフローリング、テラゾーなどを使用し、壁面はトラバーチンの腰壁に漆喰、壁紙張り、チーク材の合板などを使用。天井には木造格天井や漆喰が用いられています。全体的にシンプルな意匠ですが、照明器具や建具にはアール・デコ様式が取り入れられ、玄関内扉のガラスや囲碁将棋室の戸棚の扉金具には青海波模様が見られます。会議室には、昭和恐慌を救った高橋是清による「閑時自養神」「仁義為準縄」の書が飾られています。

周辺

本町周辺は「ハマのウォール街」と呼ばれ、横浜の中心街である関内地区で銀行が集まる場所でした。現在でも、周辺には三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行の三大メガバンクが横浜支店を構え、大光銀行やきらぼし銀行など、県外の地方銀行も支店を置いています。近隣には、旧富士銀行横浜支店や神奈川県立歴史博物館（旧横浜正金銀行）、三井住友銀行横浜支店など、明治から昭和初期にかけて建てられた銀行建築が今も残っています。

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