樫原湿原

樫原湿原について

佐賀県唐津市七山池原に位置する樫原湿原は、標高591メートル、約120ヘクタールの広さを誇る湿原です。1976年に佐賀県自然環境保全地域に指定され、その一部は特別地区にも指定されています。2001年には環境省の「重要湿地」にも選定され、その豊かな生態系から「九州の尾瀬」とも呼ばれています。

湿原内には遊歩道が整備されており、多種多様な動植物を観察しながら散策を楽しめます。特に、希少な動植物が多く自生しており、最盛期には県内外から多くのアマチュアカメラマンが訪れる人気のスポットとなっています。

多様な動植物

樫原湿原では、氷河期の残存植物であるミツガシワをはじめ、食虫植物や絶滅危惧種など、約60種類の湿地植物が生育しています。ヒツジグサ、ショウブ、ユウスゲなどの植物が見られるほか、ミツガシワ、トキソウ、サギソウといった希少種、モウセンゴケなどの食虫植物も生育しています。特にサギソウは旧七山村の村花であり、樫原湿原を代表する植物として知られています。

動物では、絶滅危惧種であるハッチョウトンボやモートンイトトンボなどの湿生昆虫が生息しており、特にモートンイトトンボは佐賀県内ではこの樫原湿原でしか見ることができません。その他にも、アマガエルやヨシキリなどが生息しています。

自然保護の取り組み

「九州の尾瀬」と呼ばれる樫原湿原も、人の手が全く入っていないわけではありません。かつて湿原を分断した道路や、野焼きの中断、オオミズゴケの除去不足などにより、開放水面の減少、水量の低下、土砂の堆積などの問題が発生しました。その結果、いくつかの植物が確認できなくなったり、既存の植物の株数が減少したりするなどの影響が出ています。

これらの状況を改善するため、2002年から自然生態系の保全・再生に向けた調査が行われ、2005年には佐賀県主導による「樫原湿原地区自然再生事業実施計画」が策定されました。この計画に基づき、昭和中期頃の湿地植生の再生を目指した取り組みが行われています。

具体的な取り組みとしては、ミズゴケなどの繁茂した植物や枯れた植物の堆積による陸地化を防ぐため、浚渫や植生の抜き取りが行われました。これにより、開放水面が拡大し、多様な植生が回復するなどの成果が出ています。その他にも、湿地帯に侵入した灌木の除去や、湿原を分断する道路の移設なども検討・実施されています。

注意事項

豊かな生態系を誇る樫原湿原ですが、マダニやハチ、ヘビなど、人的被害を与える可能性のある生物も生息しています。訪問する際は、長袖や長ズボンなど、肌の露出を抑えた服装を心がけましょう。

また、湿原破壊の原因の一つとして、一部の訪問者による湿地への立ち入りが挙げられます。湿地内への立ち入りは、立木の採取や伐採と合わせて禁止されています。この他にも、ペットの連れ込み、湿原内での飲食・喫煙も禁止されています。訪問の際にはこれらのルールを守るようにしましょう。

アクセス

• - 車: 長崎自動車道 佐賀大和ICから約40分、西九州道（唐津道路）浜玉ICから約35分。湿原付近に駐車場があります。
• - JR: JR筑肥線 浜崎駅からタクシーで約40分。

出典

* (出典元情報は省略します。)

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