櫛笥隆賀

櫛笥隆賀：中御門天皇を支えた公卿

櫛笥隆賀（くしげ たかよし）は、承応元年（1652年）に生まれ、享保18年（1733年）に没した江戸時代中期の公卿です。最終的には従一位内大臣にまで昇り、朝廷内において重要な地位を占めました。その生涯は、中御門天皇の擁立と、その後の朝廷政治に深く関わったことで特筆されます。

生い立ちと家督相続

隆賀は、初め園池実廉と名乗り、後に櫛笥隆慶、そして隆賀と改名しました。園池宗朝の子として生まれましたが、櫛笥隆胤の養子となります。櫛笥家は、隆賀の実父の園池宗朝の兄である櫛笥隆朝が興した家で、姉の櫛笥隆子は後水尾天皇の寵愛を受け、後西天皇を生んでいます。しかし、隆朝の嫡男である隆方が早世し、その養子となった次男の隆胤も若くして亡くなったため、兄弟の従兄弟にあたる隆賀が櫛笥家を相続することになったのです。

昇進と東山天皇との関係

明暦4年（1658年）に園池実廉として叙爵し、寛文2年（1662年）に櫛笥家を相続して櫛笥隆慶と名乗り元服、従五位上侍従に任ぜられました。その後も順調に昇進を重ね、寛文6年（1666年）には正五位下、左少将、寛文10年（1670年）には従四位下、左中将に任ぜられました。貞享4年（1687年）には右兵衛督に任ぜられ、元禄元年（1688年）には参議に任ぜられました。

元禄14年（1701年）に娘の賀子が東山天皇の皇子である長宮（後の中御門天皇）を生んだことが、隆賀の運命を大きく変えます。長宮が儲君として定められた際、避諱の慣例に従い、隆慶は隆賀に、慶子は賀子に改名しました。隆賀は、義父である西洞院時成と共に儲君御用に任ぜられ、中御門天皇の即位に向けて重要な役割を担いました。

中御門天皇の擁立と院政

宝永6年（1709年）に中御門天皇が即位すると、隆賀は権大納言に任ぜられ、櫛笥家としては初の事例となりました。しかし、天皇の両親である東山上皇と櫛笥賀子が相次いで死去したため、霊元法皇による院政が復活します。隆賀は、東山上皇の遺言により、妻の六条局と共に天皇の庇護と教育を任されることになり、御所の一室を与えられました。隆賀は、養育だけでなく、奏上や宣下の場にも天皇の側に控え、政治にも深く関与しました。

朝廷政治への影響力

中御門天皇が元服した後も、隆賀は非公式な顧問として、天皇の信任を得て政務に関与し続けました。関白や武家伝奏と共に政務を執り行い、天皇の意向に大きな影響力を持っていたとされます。一条兼香は、近衛家久が櫛笥隆賀や中院通躬と共に政務を握っていると記しており、近衛家久自身も、隆賀と中院通躬が「我意」で政務を取り仕切っていると記しています。これらの記録からも、隆賀が当時の朝廷政治においていかに大きな存在であったかが窺えます。

その後

享保5年（1720年）に中御門天皇に皇子が生まれると、妻の六条局と近衛家熙が皇子の養育にあたりました。享保8年（1723年）には短期間内大臣を務め、享保9年（1724年）には従一位に叙せられました。享保13年に出家し、法号を成足院是空と称しました。享保18年（1733年）に死去。

隆賀には実子がいましたが、鷲尾隆尹の三男である隆成を養子に迎えました。隆成は後に実子の隆兼を養子とし、家督を譲っています。隆成と隆兼は、それぞれ中御門天皇と桜町天皇の議奏を務め、櫛笥家は天皇の側近としての地位を固めました。

櫛笥隆賀は、中御門天皇の擁立と、その後の朝廷政治において重要な役割を果たした公卿でした。その生涯は、天皇との深い繋がりと、朝廷内での影響力の大きさを示しています。

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