歌だ!飛び出せ2万キロ

歌だ！飛び出せ2万キロ

『歌だ！飛び出せ2万キロ』は、1975年4月4日から同年6月27日まで、フジテレビ系列で毎週金曜日の20時00分から20時55分に放送されていた、紀行番組の要素を取り入れた歌謡番組です。わずか3ヶ月間、全10回の放送で終了しました。

「歌のふるさと」を探求する旅

この番組の核となったテーマは「歌のふるさとに帰ろう」でした。番組では、日本の四季が織りなす美しい風景や、日本各地で暮らす人々の日常生活を紹介しながら、それぞれの土地に根付く歌が、人々の営みにどのように関わっているのかを掘り下げました。当時のテレビで人気を博していた歌手たちがリポーターとして各地を訪れ、その土地にゆかりのある歌を披露するというユニークな構成で進行しました。

特に1975年5月2日の放送では、当時フジテレビが企画した『5・2小川宏のテレビアタック24時間!!』という、司会者の小川宏が局の全番組に出演するという特別企画の一環として、小川宏氏が本番組にも出演するという珍しい出来事がありました。

同時期の「ふるさと」番組ブームと本番組の特色

1975年度の前半は、日本の民放テレビ各局で「ふるさと」をテーマにしたバラエティ番組が多く制作された時期でした。フジテレビ系列では、本番組の他にも、関西テレビが制作し桂小金治さんが司会を務めた『おくにじまんスター自慢』が始まりました。他系列では、NETテレビ（現・テレビ朝日）の『宮田輝の日本縦断 ふるさと』が宮田輝さんの司会でスタートしたほか、長年人気を博したNHK総合の『ふるさとの歌まつり』の後継番組ともいえる『お国自慢にしひがし』が、当時NHKアナウンサーだった山川静夫さんの司会で放送されており、これらの番組が一種の「ポストふるさとの歌まつり」競争のような様相を呈していました。

しかし、『歌だ！飛び出せ2万キロ』は、これらの同時代の「ふるさと」番組とはいくつかの点で異なっていました。民謡や特定の郷土芸能に特化するのではなく、より広範な意味での「歌」と土地との結びつきに焦点を当てていた点です。また、『おくにじまんスター自慢』や『日本縦断』のように特定の都道府県に焦点を当てるのではなく、より広がりを持った「地域」単位でスポットを当てていたことも、本番組の特徴でした。

短期間で終了した要因

わずか3ヶ月という短い期間で放送が終了してしまった背景には、いくつかの理由が挙げられます。まず、前番組である『ゴールデン歌謡速報』が、歌だけでなく笑いの要素も強く打ち出したエンターテインメント性の高い番組だったのに比べ、『歌だ！飛び出せ2万キロ』は紀行と歌という比較的落ち着いた内容だったため、番組のカラーチェンジが視聴者の期待と合わなかった可能性があります。さらに、放送時間帯には強力な競合番組が存在しました。同時期に放送されていた日本テレビの国民的ドラマ『太陽にほえろ!』や、NETテレビで熱狂的な支持を得ていた『ワールドプロレスリング』に、視聴率で大きく差をつけられてしまったことも、番組継続が困難になった大きな要因と考えられます。また、番組で訪れた場所も、京都市や北海道といった遠方の地域を除けば、多くが関東地方やその周辺にとどまっており、「2万キロ」というタイトルや「日本各地」というテーマに対して、訪れた場所の範囲がやや限定的だったことも、番組の魅力に影響した可能性も指摘されています。

放送休止と後番組、そしてその後の時間帯

放送期間中には、プロ野球中継のために番組が休止された回もありました。具体的には、1975年5月9日、5月23日、6月20日はプロ野球の試合が組まれており、本番組と同じ20時00分から20時55分という時間帯で中継が行われました。これは、当時のフジテレビ系列のプロ野球中継が土曜日を除いて20時開始が多かったことや、19時30分からの番組が特別編成だったことなどが関連していると推測されています。

本番組が終了した翌週、1975年7月4日からは、再び歌と笑いを組み合わせた音楽バラエティ番組『歌謡ヒットプラザ』がスタートしました。この番組では、『歌だ！飛び出せ2万キロ』から引き続き土居まさるさんが司会を務めたほか、新たに桂三枝さん（現・六代目桂文枝）が加わりました（後に土居さんが降板し、桂三枝さんがメイン司会となります）。

『歌だ！飛び出せ2万キロ』以降、フジテレビの金曜20時台は、その後しばらくの間、短期間で番組が入れ替わる試行錯誤が続く時期となりました。この状況は、時代劇としては初めての2時間ドラマ枠として知られる『時代劇スペシャル』が開始される1981年まで、約6年間にわたって継続しました。

出演者・スタッフ、訪れた場所

番組の司会は、タレントの土居まさるさんと歌手の由紀さおりさんが担当しました。由紀さんは前番組の『ゴールデン歌謡速報』から引き続きの出演でした。リポーターとしては、せんだみつおさん、岡まゆみさん、矢野勇生さんが出演し、各地からのレポートを担当しました。

制作スタッフとしては、プロデューサーと演出を兼任した熊谷雅弘氏を中心に、林良三氏、久保田逸博氏、王東順氏らが演出を担当しました。構成は、保富康午氏、下山啓氏、河村シゲル氏が手がけました。制作協力はフジプロダクション（千秋与四夫氏）、制作著作はフジテレビでした。

番組で訪れた場所の例としては、千葉県の犬吠埼、神奈川県の横浜市、利根川流域、静岡県の伊豆地方、群馬県の赤城山、長野県の千曲川沿い、群馬県の高崎市、長野県の上高地、そして京都市や北海道などがありました。

まとめ

短い期間での終了となりましたが、『歌だ！飛び出せ2万キロ』は、「歌のふるさと」というテーマを掲げ、紀行要素を取り入れながら日本の情景と歌とを結びつけようとした、1970年代半ばのテレビ番組としては独自の企画性を持った番組であったと言えるでしょう。

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