歌川芳勝

歌川芳勝（うたがわ よしかつ、生没年不詳）は、江戸時代に活躍した浮世絵師です。歌川国芳の門人であり、本姓は石渡、名は庄助または勇助と伝えられています。江戸の人で、歌川の画姓を称し、一秀斎、一勢斎という号を用いていました。

もともと幕府御用達の醤油商を営んでいましたが、後に廃業し、国芳に入門して浮世絵師としての道を歩み始めます。作画期は弘化から安政にかけての頃で、合巻の挿絵や錦絵などを手がけました。

漆山天童編の『俗曲挿絵本目録』によれば、所作事『八重九重花姿絵』（天保12年〈1841年〉上演）の長唄正本の挿絵を描いたとされています。また、浄瑠璃にも通じており、清元千年太夫と称していたという一面も持ち合わせていました。息子に歌川芳室がいます。

現存する作品としては、以下のようなものが確認されています。

合巻『忠臣蔵』 ※玉塵斎雪住編、刊行年不明
大判錦絵「大森彦七」　「一勢斎芳勝画」の落款
大判錦絵3枚続「頼朝公富士之御将図」 江戸東京博物館所蔵　「一勢斎芳勝画」の落款
大判錦絵「阿蘭陀新渡り大虎」
大判錦絵「甲越武勇伝」 山梨県立博物館所蔵　「一秀斎芳勝画」の落款
大判錦絵「麹町十三丁目福寿院にて興行の虎」
大判錦絵「開運源平振分寿語録」 国立国会図書館所蔵　「一勢斎芳勝画」の落款
大判2枚続錦絵「五体和合心臍之教訓」 内藤記念くすりの博物館所蔵

これらの作品から、芳勝が当時の風俗や歴史、物語などを題材に、多様な表現を試みていたことが窺えます。特に、「頼朝公富士之御将図」や「甲越武勇伝」などは、合戦の様子を迫力ある構図で描いており、その力量が伺えます。

歌川芳勝に関する研究はまだ十分とは言えませんが、国芳門下の一人として、江戸時代の浮世絵界に足跡を残した絵師であることは間違いありません。今後の研究によって、その生涯や作品について、より詳細な情報が明らかになることが期待されます。

参考文献

漆山天童編『俗曲挿絵目録』※早稲田大学図書館古典総合データベースに画像あり。
日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）大修館書店、1982年
* 『歌川国芳とその一門展』浮世絵 太田記念美術館、1990年

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