歌川芳女

歌川芳女（うたがわ よしじょ、天保13年〈1842年〉 - 没年不明）は、江戸時代後期の浮世絵師で、歌川国芳の娘として知られています。本名は井草よし、または阿芳といい、井草芳子とも呼ばれていました。

生涯

芳女は、天保13年（1842年）に生まれ、幼い頃から父である歌川国芳に絵の手ほどきを受けました。後に、国芳の養嗣である田中基英と結婚し、和泉町から横浜へと移り住んでいます。

芳女の作画期は嘉永から文久年間（1848年 - 1864年）にかけてで、文久元年（1861年）に父・国芳が亡くなると、夫の基英が井草の姓を継ぎ、芳女は一勇斎、朝桜楼の号を襲名しました。その後、大坂町あたりに住み、提灯屋を営んでいたとされています。一時、絵画叢誌の発行所であった東陽堂に勤めていたという説もあります。

作品としては、父・国芳の「山海愛度図会」や揃物「誠忠義臣名々鏡」などのコマ絵を姉の鳥女に次いで多く描きました。芳女単独の作品としては、大判3枚続の錦絵「五節句の内 三節の見立新材木町新乗物町」が知られています。

明治6年（1873年）には、国芳の没後13回忌の追善会を行い、国芳の門人たちと共に墨田区向島の三囲神社の絵馬堂脇に国芳を顕彰する石碑（一勇斎歌川先生墓表）を建立しました。しかし、その後は生活が困窮したようで、熊耳耕年の回顧によれば、明治28年（1895年）ごろには瀬戸の楽焼のネガケ玉を描く仕事で日銭を稼いでいたといいます。明治30年（1897年）12月14日の『萬朝報』では、当時芳女が娘と本所区吉岡町に住み、「皮絵を絵描くを営業となし」ていたと報じられています。

作品

「五節句の内 三節の見立新材木町新乗物町」 大判3枚続

参考文献

日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻） 大修館書店、1982年
『歌川国芳とその一門展』、浮世絵太田記念美術館、1990年
『江戸文化シリーズ11回 江戸の閨秀画家』（展覧会図録）、板橋区立美術館、1991年
柏木智雄・内山淳子・片多祐子『はじまりは国芳　江戸スピリットのゆくえ』、大修館書店、2012年
日野原健司「歌川国芳の娘たち －芳鳥・芳女の生涯と画業－」、『太田記念美術館紀要　浮世絵研究』第10号、2019年

関連項目

歌川国芳
浮世絵

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