正村俊之

正村 俊之

日本の社会学者、正村俊之（まさむら としゆき）氏は、社会学、コミュニケーション論、そしてメディア論を専門分野としています。現在、大妻女子大学社会情報学部の教授を務めています。

経歴

1953年に東京都で生まれた正村氏は、1977年に横浜国立大学経済学部経済学科を卒業しました。その後、東京大学大学院社会学研究科へと進み、1983年に単位取得退学。大学院修了後は、関西学院大学社会学部に奉職し、専任講師、助教授として教育研究に携わりました。1995年には東北大学文学部の教授に就任し、2000年からは東北大学大学院文学研究科の教授を務めました。そして、2014年からは現在の所属である大妻女子大学社会情報学部の教授として活動しています。

研究内容

正村氏の研究は、現代社会や日本社会にみられる様々な社会的・文化的な事象を、社会コミュニケーション論や社会情報学の視座から深く掘り下げています。その理論的なアプローチは、ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンが提唱した社会システム論を重要な基礎としています。しかしながら、単にルーマン理論を踏襲するのではなく、社会的コミュニケーションが持つ「結びつける力」と「引き離す力」、すなわち結合と分離のダイナミクスに特に着目し、これを情報論的、メディア論的な観点から独自の理論へと発展させている点が特徴です。

その研究領域は幅広く、経験的な分析から原理論、現代社会論に至るまで多岐にわたります。例えば、日本社会における「秘密」という鍵概念を通じて、コミュニケーションの構造を解き明かす経験的な研究。また、写像という概念を手がかりに、情報、記号、そして意味の関係性を根源から問い直す原理的な考察。さらに、グローバリゼーションがもたらす時間と空間の秩序の再編成を射程に入れた現代社会の構造変容に関する議論などを展開しています。

主要著作

正村俊之氏の主な著作には、以下のようなものがあります。

単著

『秘密と恥―日本社会のコミュニケーション構造』（勁草書房、1995年）
『情報空間論』（勁草書房、2000年）
『コミュニケーション・メディア―分離と結合の力学』（世界思想社、2001年）
『グローバル社会と情報的世界観―現代社会の構造変容』（東京大学出版会、2008年）
『グローバリゼーション―現代はいかなる時代なのか』（有斐閣、2009年）
『変貌する資本主義と現代社会―貨幣・神・情報』（有斐閣、2014年）
『主権の二千年史』（講談社、2018年）

共著

『社会学の世界』（荻野昌弘他との共著、八千代出版、1995年）
『社会学のエッセンス―世の中のしくみを見ぬく』（友枝敏雄他との共著、有斐閣、1996年；新版2007年；新版補訂版2017年）

編著

『情報化と文化変容』（ミネルヴァ書房、2003年）
『生と死への問い』（東北大学出版会、2011年）
『コミュニケーション理論の再構築―身体・メディア・情報空間』（勁草書房、2012年）
『ガバナンスとリスクの社会理論―機能分化論の視座から』（勁草書房、2017年）

共編著

『電子メディア文化の深層』（伊藤守、小林宏一との共編、早稲田大学出版部、2003年）
『グローバル社会の情報論』（伊藤守、西垣通との共編、早稲田大学出版部、2004年）
『パラダイムとしての社会情報学』（伊藤守、西垣通との共編、早稲田大学出版部、2003年）
『情報秩序の構築』（伊藤守、林利隆との共編、早稲田大学出版部、2004年）
『東日本大震災と社会学―大災害を生み出した社会』（田中重好、舩橋晴俊との共編、ミネルヴァ書房、2013年）

訳書

* ニクラス・ルーマン著『信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム』（勁草書房、1990年）

これらの著作を通じて、社会学、コミュニケーション論、メディア論における重要な貢献を行っています。特にニクラス・ルーマンの理論を日本社会の文脈で展開し、情報やメディアが現代社会の構造や文化に与える影響を深く考察する研究は、学界内外で高く評価されています。

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