武ノ里武三

武ノ里 武三（たけのさと たけぞう）は、明治42年（1909年）4月20日に青森県五所川原市で生まれた力士です。本名を吉崎 武三といい、相撲界では出羽海部屋に所属しました。身長173cm、体重94kgと、当時としても特に大柄ではなかった体格で、得意としていたのは左四つからの寄りでした。そのキャリアの最高位は、昭和18年（1943年）一月場所での東前頭十四枚目でした。

大正15年（1926年）一月場所で角界の第一歩を踏み出した武ノ里は、番付を着実に上げていきました。昭和5年（1930年）十月場所では東幕下五枚目の地位で素晴らしい相撲を見せ、幕下優勝を果たします。この実績が認められ、翌昭和6年（1931年）一月場所には念願の十両昇進を決めました。しかし、この場所では体調が万全ではなく四勝七敗と期待に応えられず、続く五月場所は残念ながら全休となり、再び幕下へと番付を下げてしまいます。

相撲協会が激動した昭和7年（1932年）一月には、いわゆる春秋園事件が発生。武ノ里は天竜や同郷の大ノ里といった力士たちと共に協会を離れる道を選び、翌年に設立された関西角力協会に参加します。関西協会では幕内力士として活躍し、松ノ里、中ノ里と共に「大ノ里門弟三羽烏」の一人として名を馳せました。

その後、関西角力協会が解散すると、武ノ里は相撲協会への帰参を決意します。昭和13年（1938年）五月場所から幕下三十五枚目格という低い地位からの再出発となりましたが、再び白星を重ねることで順調に番付を回復。わずか二場所で十両に復帰し、十両でも二場所連続で勝ち越しを収めるなど、その実力を改めて示しました。番付運にも恵まれ、昭和16年（1941年）五月場所でついに新入幕を果たします。これは初土俵から15年、32歳での遅咲きの入幕でした。しかし、この新入幕の場所は試練の連続で、初日から十一連敗を喫するなど三勝十二敗と大きく負け越し、僅か一場所で再び十両に陥落してしまいます。この初日からの十一連敗という記録は、一場所十五日の制度になってからの新入幕力士としては最長とされています。

一度は幕下へ落ち、その後十両へ戻り、再び幕内へ。三場所の十両在位を経て、昭和17年（1942年）五月場所で二度目の入幕を果たします。この場所では見事に十勝五敗と二桁勝利を挙げ、これが結果として彼の幕内における唯一の勝ち越し場所となりました。そして昭和18年（1943年）一月場所では自己最高位となる東前頭十四枚目に昇進しました。

相撲内容については、下積み時代から同郷の大ノ里の指導を仰いでいたこともあり、巧さのある「業師」として評価されていました。しかし、体格からくる体力面の課題や、比較的おとなしい性格、さらには春秋園事件による協会離脱期間のブランクなども影響し、幕内での定着には至りませんでした。幕内在位は二度の昇進で合計三場所のみとなりました。昭和19年（1944年）一月場所を最後に、力士としての活動を終え、廃業しました。

武ノ里にはいくつかの興味深いエピソードがあります。横綱初代若乃花と大関初代貴ノ花という名力士兄弟の母は、彼の又従姉にあたる親族でした。また、彼には同じ出羽海部屋から角界入りした弟がいましたが、序二段まで番付を上げたものの、二年足らずで廃業しています。さらに、幕下時代には、後に相撲史に燦然と輝く大横綱となる双葉山に対し、二度勝利したことがあるという記録も残されています。関西角力協会解散後、昭和13年（1938年）一月に大連で客死した師匠格の大ノ里を一人で看取り、その葬儀を済ませてから帰参したため、他の帰参力士より協会への復帰が場所一つ遅れたと伝えられています。この関西協会解散から帰参までの期間には、元鷲尾嶽が経営していた会社に勤務していたという説も存在します。前述の新入幕場所での初日からの十一連敗は、記録として語り継がれています。そして、彼が佐渡ヶ嶋林蔵と共に昭和十六年五月場所で新入幕したことは、明治生まれの力士としては最後の新入幕力士となった出来事でもありました。

武ノ里武三の主な成績は以下の通りです。
通算成績：94勝87敗（勝率.519）
幕内成績：18勝27敗（勝率.400）
現役在位：16場所
幕内在位：3場所
各段優勝：幕下優勝1回（昭和5年十月場所）

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