武田春郎

武田春郎

武田春郎（たけだ しゅんろう）は、1887年2月20日に生まれ、没年は不詳の日本の元俳優です。本名は武藤祐喜（むとう ゆうき）で、後年は武田秀郎（たけだ ひでろう）、武田秀雄（たけだ ひでお）と名乗りました。彼は松竹蒲田撮影所、松竹大船撮影所などで長く活躍し、戦前の映画界において貴重な名脇役として知られています。

生い立ちと初期の経歴

武田春郎は、1887年（明治20年）2月20日に三重県飯南郡柿野町（現在の松阪市飯南町）で生まれました。しかし、1923年（大正12年）に発行された『現代俳優名鑑』には、出生地は上記のように記されているものの、生年月日は「不明」とされており、当時は非公表でした。東洋大学文学部哲学科を中退後、僧侶、洋物屋、洋服屋、薬屋、奇術師、味噌屋、甘酒屋、中華料理店員、占師、催眠術師、雑誌記者、新聞記者など、多岐にわたる職業を経験しながら俳優を志していました。

1924年（大正13年）に発行された『映画新研究十講と俳優名鑑』によれば、小学校卒業後、大学には進学せず、僧堂学校に3年間在学していたとされています。1907年（明治40年）には、小屋掛け芝居の島田新平一座に入り、神奈川県横浜市北方町（現在の中区）の劇場で初舞台を踏みました。その後、1909年（明治42年）には大阪朝日座を拠点とする岡本五郎一座に所属し、日活の前身である吉沢商店への入社を目指しましたが、実現には至りませんでした。

俳優としてのキャリア

1916年（大正5年）、武田は小林商会に入社し、芸名を「武田春郎」と名乗り、同所の大部屋俳優となりました。そこで、連鎖劇の演出・出演をしていた新派俳優の井上正夫と出会い、1917年（大正6年）1月に井上の弟子となり、本郷座の舞台を中心に活動しました。1920年（大正9年）4月には、井上が国際活映の創立に参加したのに伴い、国活角筈撮影所に入社し、同年10月23日公開のサイレント映画『山恋し』で映画デビューを果たしました。しかし、同社は1921年（大正10年）末に事実上崩壊し、角筈撮影所も閉鎖されました。

1922年（大正11年）3月1日、武田は井上と共に松竹蒲田撮影所へ移籍しました。1925年（大正14年）1月22日に公開された吉野二郎監督の映画『夜行列車』などに出演し、以後1936年（昭和11年）1月15日に松竹大船撮影所に異動するまで、主に中堅の脇役俳優として数多くの作品に出演しました。

松竹大船撮影所時代とその後

1936年（昭和11年）1月、松竹大船撮影所へ異動した武田でしたが、トーキー製作の本格化とともに、出演数は徐々に減少していきました。1935年（昭和10年）末には芸名を「武田秀郎」または「武田秀雄」と改名し、1942年（昭和17年）7月16日に公開された清水宏監督の映画『兄妹会議』まで出演を続けました。その後、映画出演を控えるようになり、同所の演技係長を務める傍ら、松竹大船演技者養成所の主事・講師も兼任し、後進の育成に尽力しました。

戦争末期には、出身地である三重県松阪市へ子供たちと共に疎開しました。第二次世界大戦終結後の出演作品はなく、以後の消息は不明とされていましたが、『近代映画』1952年（昭和27年）3月1日号の記事で、執筆時点で既に故人であることが記されています。没年は不詳です。

主な出演映画

武田春郎は、数多くの映画に出演しており、そのフィルモグラフィーは多岐にわたります。以下に代表的な作品をいくつか挙げます。

• - 山恋し（1920年）
• - 夜行列車（1925年）
• - 小幡小平次（1925年）
• - お坊ちゃん(1926年)
• - 九官鳥（1927年）
• - 父帰る（1927年）
• - 沈丁花（1933年）
• - 婦系図（1934年）
• - 春琴抄 お琴と佐助（1935年）
• - 若旦那 百万石（1936年）
• - 暖流（1939年）
• - 戸田家の兄妹（1941年）
• - 兄妹会議（1942年）

武田春郎は、その長いキャリアの中で、様々な役柄を演じ、日本の映画史にその名を刻みました。彼の出演作品は、今もなお多くの映画ファンに愛され続けています。

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