馬寮

馬寮（めりょう）について

馬寮は、日本の律令制度において設けられた官職で、その役割は朝廷が保有する馬の飼育と調教に関わることでした。唐からの影響を受け、馬寮は「典厩」とも呼ばれ、左右に分かれた左馬寮と右馬寮によって運営されました。

役割と機能

馬寮の主な任務は、各地の官牧から朝廷に貢上された馬の管理を行うことでした。これらの馬は馬寮が直接管理する厩舎や牧場で飼育されるか、畿内及びその周辺の国々に命じて飼育させることがありました。加えて、馬寮は勅旨牧の監督も行い、必要に応じて軍事や儀式の際に馬を供給しました。

馬寮に所属する官人たちは武官に分類され、剣を帯びることが認められていました。また、彼らは都の治安維持を補佐する役割も果たしており、これにより後に武士が任官される要因が生まれたと考えられています。馬の飼育実務は馬部という部隊が担い、その指揮は飼戸により行われました。

歴史的背景

奈良時代

奈良時代において、大宝律令によって正式に左馬寮と右馬寮が設置されました。当初の頭（左馬頭・右馬頭）は、711年に特別な地位を得た皇族の葛木王が馬寮監に任じられ、左右の馬寮を統括することになります。これにより、馬寮の重要性が高まっていきました。765年には宮中の厩を扱う内厩寮が分離され、この時期に左右馬寮は781年に主馬寮として統合される運命を辿ることとなります。

平安時代

平安時代に入ると、808年に主馬寮の名称が左馬寮、内厩寮が右馬寮に復元され、従来の体制が戻りました。この頃、馬寮監も復活し、名目上の役職として位置づけられましたが、実際の権限は乏しくなっていました。それにもかかわらず、平安時代後期には名士たちが左右馬頭の地位を求め、馬寮は武士たちにとって憧れの官職となりました。

鎌倉時代

鎌倉時代には、源実朝が左馬寮御監に任命され、執権や連署の多くも馬寮の役職につくことが一般的でした。この時期、馬寮は政治において重要な役割を果たしました。

室町時代

室町時代になると、足利義満をはじめとする将軍たちが右馬寮御監に叙任されるなど、馬寮の重要性はさらに増していきました。また、左馬頭の地位も将軍家に近しい者たちが就任することが多くなり、特権的な官職としての色合いが強くなりました。

江戸時代

江戸時代では、徳川家康が左馬寮御監に、徳川家光が右馬寮御監に叙任され、以後この地位は徳川将軍に受け継がれていきました。また、足利氏の後裔も左馬頭を名乗ることが認められるようになりました。

結論

馬寮はその歴史を通じ、多くの政治的役割と軍事的役割を担い、特に平安時代から鎌倉時代にかけて武士たちにとっての憧れの職務となりました。馬の飼育や調教はもちろん、治安維持や儀式に関わる重要な官職として位置づけられていました。

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