比叡山鉄道線

比叡山坂本ケーブル：比叡山への歴史あるアクセスルート

比叡山延暦寺への東側アプローチとして機能する比叡山坂本ケーブルは、滋賀県大津市の坂本駅から延暦寺駅までを結ぶ、日本最長のケーブルカー路線です。通称「坂本ケーブル」として親しまれ、特に冬季は西側から比叡山山頂を目指す他の交通手段が運休となるため、比叡山への唯一の公共交通機関としての役割を担っています。

歴史と技術革新

1927年の開業以来、比叡山へのアクセスを支えてきた坂本ケーブル。その歴史は、比叡山延暦寺の参拝や避暑地としての比叡山への観光需要の高まりとともにありました。幾多の困難を乗り越え、太平洋戦争中には海軍に接収され、特攻機の運搬にも使用されるなど、波乱に満ちた歴史を刻んできました。

戦後の復興を経て、車両の更新や駅舎のリニューアルなど、時代に合わせて進化を遂げています。1993年には愛称「縁」号と「福」号のついた新しい車両が導入され、2006年には老朽化した架線の撤去と蓄電池による電源システムへの移行が完了しました。この架線撤去は、景観の向上と安全性の確保に大きく貢献しています。ケーブル坂本駅入口には、役割を終えた架線柱の一部がモニュメントとして保存されており、歴史を物語っています。

さらに、1927年開業当時のケーブル坂本駅とケーブル延暦寺駅の駅舎は、1997年に国の登録有形文化財に登録され、歴史的価値の高さが認められています。

路線と運行

全長2025m、高低差484mを誇る坂本ケーブルは、途中にはほうらい丘駅ともたて山駅の2つの駅があります。通常は全列車が通過しますが、事前に申告することでこれらの駅での乗降も可能です。運行間隔は通常30分ですが、紅葉シーズンなどの土日祝日には15分間隔に増発され、観光客の需要に対応しています。所要時間は約11分ですが、中間駅停車の場合は多少時間が延びます。

運賃とチケット

運賃体系は、短い区間のケーブル坂本駅～ほうらい丘駅間、ケーブル延暦寺駅～もたて山駅間(120円)と、それ以外の区間(870円)で分けられています。870円区間には往復割引運賃も設定されています。乗車券は券売機で購入できる軟券タイプで、天台座主が揮毫した「縁」と「福」の文字が印刷されているのが特徴です。記念として持ち帰ることができます。870円区間の乗車券は途中下車も可能で、観光の計画に合わせて柔軟に利用できます。

アクセスと接続

ケーブル坂本駅からは、京阪電鉄石山坂本線の坂本比叡山口駅まで連絡バスが運行しており、徒歩でもアクセス可能です。ケーブル延暦寺駅からは、比叡山ドライブバスや比叡山内のシャトルバスに接続できます。

まとめ

比叡山坂本ケーブルは、歴史と技術革新が融合した、比叡山へのアクセスを支える重要な交通手段です。長い歴史と、時代に合わせて進化を続ける姿は、日本のケーブルカーの歴史を語る上で欠かせない存在となっています。比叡山を訪れる際には、ぜひ坂本ケーブルを利用し、その歴史と技術の粋を体感してみてはいかがでしょうか。

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