比奈麻治比売命神社

比奈麻治比売命神社

比奈麻治比売命神社（ひなまじひめみことじんじゃ）は、島根県隠岐郡西ノ島町にある神社で、古くからの信仰が息づく場所です。この神社は式内社として認められ、通称「済大明神」としても知られています。

概要

この神社は、かつて西ノ島の東北端、済の浦の山上に存在していました。文献によれば、8世紀からその名前が登場する古社であり、祭神である比奈麻治比売命は火に関する神々しい存在とされてきました。「延喜式神名帳」にも記されているにもかかわらず、中世以降の時代にはその名をあまり見かけなくなります。しかし、近世に入ると「済大明神」として再び文献に登場し、地域の産土神として信仰されるようになりました。参拝が難しい地にあったため、昭和3年（1928年）頃に現在の集落に近い地に遷座されました。

祭神

祭神である比奈麻治比売命（ひなまじひめのみこと）は、火にまつわる霊験があると語り継がれています。神の名の「ヒナマチ」は、「火の真霊」を意味するとも解釈され、特に火に関連する神として地域の人々に親しまれています。また、この神社が島根県において唯一の比奈麻治比売命を祀る場所であり、他の地域でも同様の神名は見受けられないものの、関連する神々が祀られている神社は存在します。たとえば、福岡県福岡市の櫛田神社や長崎県西海市の焼火神社などが挙げられます。

施設

現社地

当神社の社殿は本殿と拝殿から構成されています。本殿は間口1間半、奥行1間半の春日造変体であり、拝殿は間口4間、奥行4間となっています。境内社として御崎社、天満社、八大龍王社があります。これらは明治40年（1907年）に合祀され、昭和3年（1928年）の遷座時には旧社地に残されましたが、昭和45年（1970年）に現在の社地へも移されました。

旧社地

旧社地は、済の浦の山上に位置しており、ここにはその歴史を示す石碑が建立されています。

歴史

比奈麻治比売命神社の歴史は古く、『日本後紀』の記録には延暦18年（799年）に遣渤海使の内蔵宿禰賀茂麻呂が霊験を受けて帰還した際のエピソードが詳述されています。後の神階も度々上昇し、貞観13年（871年）には正五位下に上がりました。その後しばらくは、神社の名前は歴史に現れなくなったものの、地域の信仰が続いていました。

近世になり、神社は産土神としての役割を果たすようになり、参拝の利便性の観点から何度か社地が変更されました。特に、昭和3年（1928年）には「ビヤ」の地に移転し、現在に至っています。神社の遷座は、旧社地を完全に廃止することなく行われ、境内社はしばらくの間旧社地に留まっていました。

伝説

祭神・比奈麻治比売命は、海士町に鎮座する宇受賀命神社の祭神と夫婦であるとされています。また、神の使いとして金色の小蛇が現れるという伝説も伝わっており、この小蛇は参拝者に影響を及ぼす神秘的な存在とされています。

祭事

毎年7月28日に行われる祭りには、地域の人々が集まり神楽が奉納されます。祭りの後には直会が行われ、参加者たちは神社で御神酒をいただきます。氏神講は毎年1月28日に行われ、地域の人々にとって大切な行事として続いています。

このように、比奈麻治比売命神社は古代からの歴史と伝説が息づく場所であり、地域の人々にとって特別な存在であることが伺えます。

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