毛利元次

毛利元次：激動の徳山藩主

毛利元次は、江戸時代前期の徳山藩3代藩主です。初代藩主・毛利就隆の三男として生まれ、異母兄である2代藩主・毛利元賢の急逝後、その跡を継ぎました。元次は藩主として、藩政改革、文化の奨励に尽力しましたが、本家である萩藩との対立により、最終的には改易という憂き目に遭いました。

生い立ちと藩主就任

元次は寛文7年（1667年）に京都で生まれました。母は側室であり、元次は庶子として家臣の永井家で育てられます。後に父の計らいで藩に迎えられ、異母弟・元賢から屋敷を与えられるなど重用されました。元禄3年（1690年）に元賢が若くして亡くなると、その養嗣子として藩主の座を継ぎます。しかし、実際には元賢の庶兄であり、年齢を偽っての相続でした。

藩政改革と萩藩との対立

藩主となった元次は、高禄家臣の権勢が強かった藩の立て直しを図ります。法制の整備、藩主権力の強化を進め、萩藩からの付家老であった神村家、桂家を断絶させるなど、大胆な改革を実行しました。これらの措置は、萩藩の影響力を排除しようとする元次の強い意志の表れでした。

元次は文化人としても優れた才能を発揮しました。伊藤仁斎の子・伊藤東涯に依頼して『塩鉄論』を刊行、宇都宮遯庵、桂方直ら当代一流の学者を招き優遇するなど、文教を奨励しました。また、城下町の発展にも尽力し、学問所「棲息堂」を設けるなど、文化的な環境整備にも力を注ぎました。

しかし、元次の改革は本家である萩藩との対立を深めることになります。元々、元次の藩主就任に際して、萩藩は別の人物を擁立しようとしていました。そのため、元次の改革は萩藩にとって脅威となり、両者の関係は悪化の一途を辿りました。

改易とその後

正徳5年（1715年）、元次は万役山事件を引き起こし、萩藩との対立は決定的となります。この事件が原因となり、幕府の命令により徳山藩は改易され、元次は出羽新庄藩へ身柄を移されます。

しかし、元次の家臣たちは諦めませんでした。奈古屋里人を中心に、藩の再興を目指し奔走します。また、萩藩主・毛利吉元も元次の隠居は求めていましたが、改易は想定外であったため、幕府に再興を願い出ました。その結果、元次の次男・元堯が藩主となることが許され、徳山藩は再興を果たしました。しかし、元次は流罪中に病に倒れ、享保4年（1719年）に53歳で亡くなりました。

人物像と評価

元次は剛毅果敢で文武両道に秀でた人物であったと伝えられています。一方で、気性の激しい一面もありました。文化人としての才能も高く評価されており、著作も多く残っています。徳山藩の藩政改革に尽力し、文化の発展に貢献した元次。その激しい生涯は、今もなお語り継がれています。

参考文献
徳山市史
渡辺憲司「毛利元次文芸圏考」（『近世大名文芸圏研究』、八木書店、1997年）
防長新聞社山口支社編 編『近世防長諸家系図綜覧』三坂圭治監修、防長新聞社、1966年3月

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