宇都宮遯庵

宇都宮遯庵（うつのみや とんあん）

宇都宮遯庵は、江戸時代に活躍した儒学者です。名は由的、号は遯庵の他に頑拙を名乗りました。宇都宮三近、宇都宮熊的とも呼ばれています。

生涯

周防国岩国（現在の山口県岩国市）で生まれました。父は岩国領主である吉川氏に、300石取りの奏者番として仕えていました。祖父の宇都宮杢之允は、後に岩国のシンボルとなる錦帯橋の建設を指揮した普請奉行でした。

遯庵自身も岩国領3代領主・吉川広嘉に仕えていましたが、17歳の頃に広嘉の命により京都へ遊学し、松永尺五に師事して儒学、特に朱子学を学びました。木下順庵・安東省菴と並び、松永尺五の学派における「三庵」の一人と称されました。

明暦3年（1657年）に帰郷後は、岩国領内で朱子学を広めました。しかし、延宝3年（1675年）と延宝8年（1680年）の二度にわたり、著作である『日本古今人物史』において、豊臣家臣・中川清秀のキリスト教に関する記述が幕府から問題視され、岩国にて数年間の禁錮処分を受けました。

その後、京都へ上りますが、岩国領4代領主・吉川広紀の招きに応じて帰郷しました。帰郷後は、朱子学を教える塾を開き、多くの門弟を育成し、周防吉川領における教育に尽力しました。また、周防国徳山藩主・毛利元次に招かれ、徳山においても朱子学を広めました。

大正4年（1915年）には、その功績が認められ、正五位を追贈されました。

弟子

香川水月斎
宮庄閑鷗斎
戸川整斎

著作

日本古今人物志
四書標注
遯庵詩集
三体詩詳解
杜律標注
文選音註
小学詳解
職原抄首書
蒙求詳説
蒙求爵位考
近思録標注
錦繍段標注
千家詩標注

錦帯橋と遯庵

岩国を代表する観光名所である錦帯橋。その名は創建当初から用いられていたものではなく、宝永3年（1706年）に遯庵が記した『極楽寺亭子記』の中に「これを凸凹というは模様の似たるをもってなり。また錦帯橋という。錦見の里に近きをもってなり。」という記述が見られるのが、錦帯橋という名称の記録における初見です。

この錦帯橋という名前は、当時岩国に滞在していた明国の禅僧・独立性易に遯庵が教えを請い、中国の古書『西湖志』に出てくる錦帯橋という名前を、岩国の橋に名付けたことがきっかけであるとされています。

参考文献

潟沼誠二「宇都宮遯庵試論」
桂芳樹「宇都宮遯庵」

関連項目

朱子学
陰徳太平記
* 独立性易

もう一度検索