民族解放軍 (マケドニア共和国)

民族解放軍（UÇK/ONA）とは

民族解放軍（アルバニア語: Ushtria Çlirimtare Kombëtare; UÇK、マケドニア語: Ослободителна народна армија; ОНА）は、2001年にマケドニア共和国（現北マケドニア共和国）で活動した、反政府武装組織です。通称として「マケドニアのUÇK」、「UÇK-M」、英語名の頭文字から「NLA」とも呼ばれます。コソボ解放軍（UÇK）との関連性が指摘されており、両組織は同じ頭文字とロゴを共有していました。

マケドニア紛争と民族解放軍の台頭

民族解放軍は、1999年秋頃にコソボ解放軍の幹部であったアリ・アフメティによって組織されました。その目的は、連邦制のマケドニア共和国において、アルバニア人がマケドニア人と同等の権利を得ることにありました。しかし、マケドニア政府は民族解放軍を過激派テロリストとみなし、アルバニア人が多数を占める地域を分離し、アルバニアへ統合しようとしていると主張しました。

2001年1月22日、民族解放軍はマケドニア治安部隊への攻撃を開始し、紛争が激化しました。3月には、マケドニア共和国の北部・西部を実効支配し、首都スコピエに迫る勢いを見せました。テトヴォ攻略は失敗したものの、同地からコソボに至る丘陵地帯を掌握。一時はスコピエ郊外の村を支配下に置くなど、その勢力は拡大しました。同年8月16日、和平合意が成立し、紛争は終結しました。

編成と軍事能力

民族解放軍は、最大で約7千人の兵力を有していたと推定されています。一部の兵士は、イギリスのSASや落下傘連隊で訓練を受けていたとも言われています。当初は軽武装でしたが、戦闘が進むにつれてマケドニア政府軍から鹵獲した戦車などの重火器を入手するようになりました。コソボ解放軍やプレシェヴォ・メドヴェジャ・ブヤノヴァツ解放軍（UÇPMB）との連携も指摘されていますが、公式には認められていません。

戦争犯罪

マケドニア紛争は小規模ながらも、戦争犯罪が報告されています。テトヴォやスコピエ周辺では、マケドニア人市民が拉致・虐待される事件が発生しました。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、民族解放軍による道路作業員の拉致・性的暴行を報告しています。また、民族解放軍はレショクにある正教会の修道院を破壊しました。一方、マケドニア政府側もモスクを破壊する事件を起こしています。

リュボテン村では、マケドニア警察による攻撃で多数の市民が死傷し、逮捕された人々が虐待を受ける事件が発生しました。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査では、リュボテンに民族解放軍がいた証拠は見つかっていません。この事件は、当時の内務大臣リュベ・ボシュコスキの旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）による訴追に発展しましたが、2008年に無罪となっています。

停戦と武装解除

オフリド合意に基づき、民族解放軍は停戦に合意しました。この合意により、アルバニア人の民族的権利が拡大され、アルバニア語が一部自治体の公用語となり、アルバニア人の政府機関への参加が進められました。また、マケドニア共和国は地方分権化を約束しました。民族解放軍は武装解除を行い、武器をNATOに引き渡しました。アリ・アフメティは、民族解放軍の解散を発表し、民族間の調和を呼びかけました。

その後、アリ・アフメティ率いる民族解放軍のメンバーは、民主統合連合（DUI）を結成し、政界に進出しました。DUIは、2002年の議会選挙でアルバニア人の支持を集め、与党の一翼を担いました。

紛争による死傷者数は正確にはわかっていませんが、双方合わせて60人前後とされています。

関連項目

マケドニア紛争
コソボ解放軍（UÇK）
チャメリア解放軍（UÇÇ）
アルバニア民族軍（AKSH）
* プレシェヴォ・メドヴェジャ・ブヤノヴァツ解放軍（UÇPMB）

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