気がむけば電話して

南沙織が1976年3月1日にCBS・ソニーから発表した通算18枚目のシングルが「気がむけば電話して」です。このシングルには、彼女の前々作にあたるヒット曲「人恋しくて」（1975年8月1日発売）と同じく、作詞を中里綴氏、作曲を田山雅充氏が手がけた2つの楽曲が収録されました。両楽曲の編曲は、いずれも萩田光雄氏が担当しています。

このシングルの発売には、他の作品とは異なる特別な経緯が存在します。当初プレスされ市場に出荷されたレコード盤（イニシャル・プレス盤）では、「ふりむいた朝」がA面曲として収録されていました。しかし、発売開始からおよそ一週間後に行われた追加プレス分からは、歌手である南沙織自身の強い意向と希望により、A面曲が「気がむけば電話して」へと差し替えられました。

このような異例の対応が行われた結果、このシングルは発売初期とそれ以降でA面曲が異なるという特徴を持つことになりました。ファンやリスナーの間では、差し替えられた後の「気がむけば電話して」がA面として認識されるのが一般的ですが、当初のA面であった「ふりむいた朝」も同時に収録されていることから、シングル全体が実質的に「両A面」のような形で親しまれる側面も持ち合わせています。これは、例えばB面曲が後になって予期せぬヒットとなり、改めて両A面シングルとして再リリースされるといったケース（例として、松田聖子の「ガラスの林檎」B面に収録されていた「SWEET MEMORIES」が後に両A面化された事例が挙げられます）とは異なり、発売直後に南沙織本人の意思によってA面が変更されたという点で、非常に珍しい事例と言えます。

音楽プロデューサーとして長年南沙織を支えた酒井政利氏は、後にこの時期を振り返り、南沙織自身が自身の歌唱や作品世界に対して、以前にも増して積極的に意見を表明するようになった時期であると語っています。このシングルにおけるA面曲の差し替えは、彼女の表現者としての成長と、自己の音楽性に対する意識の高まりを示す出来事であったとも解釈できます。

このシングルに収録された楽曲は以下の通りです。

気がむけば電話して（3分12秒）
ふりむいた朝（3分9秒）

両楽曲とも作詞: 中里綴、作曲: 田山雅充、編曲: 萩田光雄。

これらの楽曲は、シングル発売以降、長年にわたり様々なアルバムやベスト盤に収録され、南沙織の代表曲として多くのファンに親しまれています。主な収録作品の一部を以下にリストアップします。

「気がむけば電話して」主な収録作品

『Best of Best 南沙織のすべて』
『南沙織ヒット全曲集 -1976年版-』
『シンシアのハーモニー』
『シンシア・ラブ』
『シンシア・メモリー』
『THE BEST / 南沙織 -1978年11月版-|THE BEST _ 南沙織 -1978年11月版-』
『THE BEST / 南沙織 -1979年11月版-|THE BEST _ 南沙織 -1979年11月版-』
『Cynthia Memories』
『GOLDEN J-POP/THE BEST 南沙織|GOLDEN J-POP_THE BEST 南沙織』
『CYNTHIA ANTHOLOGY』
『ドーナツ盤型12cmCDコレクション』
『Cynthia Premium』
『GOLDEN☆BEST 南沙織 コンプリート・シングルコレクション』
『ゴールデン☆アイドル 南沙織』
アルバムバージョン
『素顔のままで』
『Cynthia Premium』

「ふりむいた朝」主な収録作品

『Best of Best 南沙織のすべて』
『シンシアのハーモニー』
『シンシア・ラブ』
『南沙織ベスト Recall 〜28 SINGLES SAORI + 1〜』
『Cynthia Memories』
『CYNTHIA ANTHOLOGY』
『ドーナツ盤型12cmCDコレクション』
『Cynthia Premium』
『GOLDEN☆BEST 南沙織 コンプリート・シングルコレクション』
『ゴールデン☆アイドル 南沙織』
アルバムバージョン
『素顔のままで』
『Cynthia Premium』

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