シンシアのハーモニー

南沙織の通算3作目となる2枚組ベストアルバム、『シンシアのハーモニー』は1977年6月1日にCBSソニーから発表されました。彼女の多数のベスト盤の中でも、非常に特徴的な選曲で知られる作品です。

本作の最大の特徴は、歌手デビューを飾った1971年の楽曲が一切含まれていない点にあります。これにより、南沙織の代表曲の一つとして広く知られる「17才」なども本盤には収録されていません。これは、初期のアイドルイメージからの脱却や、特定の時期の楽曲に焦点を絞った選曲方針を示唆しており、他の南沙織のベスト盤とは一線を画すユニークな一枚と言えるでしょう。

アルバムは2枚組で構成され、合計24曲が収録されています。選曲の中心となっているのは、主に1972年から1977年にかけて発表された楽曲群です。収録曲には、南沙織の音楽に深く関わった筒美京平、有馬三恵子、松本隆、中里綴といった主要な作家陣に加え、ジャニス・イアンや荒井由実（ユーミン）など、国内外の幅広いジャンルの作家による作品が収められています。編曲も萩田光雄らが多数を手がけるなど、当時の南沙織の音楽的多様性を反映したラインナップとなっています。

収録曲リスト

Disk 1 / Side A

ゆれる午後 (作詞: 有馬三恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 萩田光雄)
素顔のままで (作詞: 中里綴、作曲: 田山雅充、編曲: 水谷公生)
愛はめぐり逢いから (作詞: 岡田冨美子、作曲・編曲: 林哲司)
春の愁い (作詞: 有馬三恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 水谷公生)
ひとねむり (作詞: 落合恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 林哲司)
いつか逢えますね (作詞: 有馬三恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 船山基紀)
気がむけば電話して (作詞: 中里綴、作曲: 田山雅充、編曲: 萩田光雄)
人恋しくて (作詞: 中里綴、作曲: 田山雅充、編曲: 水谷公生)

Disk 1 / Side B

想い出通り (作詞: 有馬三恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 萩田光雄)
GET DOWN BABY (作詞: 安井かずみ、作曲・編曲: 筒美京平)
色づく街 (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
女性 (作詞: 有馬三恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 高田弘)
田園交響楽 (作詞: 松本隆、作曲・編曲: 馬飼野康二)
卒業 (作詞: 松本隆、作曲・編曲: 馬飼野康二)
ふりむいた朝 (作詞: 中里綴、作曲: 田山雅充、編曲: 萩田光雄)

Disk 2 / Side A

哀しい妖精 (作詞: 松本隆、作曲: ジャニス・イアン、編曲: 萩田光雄)
青い服の想い出 (作詞: 安井かずみ、作曲: 加藤和彦、編曲: 萩田光雄)
BACK HOME (作詞・作曲: ジャニス・イアン、訳詞: 竜真知子、編曲: 萩田光雄)
泣くのはそれから (作詞: 落合恵子、作曲: 川口真、編曲: 萩田光雄)
PEOPLE TALK （輝く瞳） (作詞・作曲: ジャニス・イアン、訳詞: 中里綴、編曲: 萩田光雄)
20才の立場 (作詞: 安井かずみ、作曲・編曲: 筒美京平)
青春に恥じないように (作詞: 荒井由実、作曲: 川口真、編曲: 萩田光雄)

Disk 2 / Side B

夜霧の街 (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
夏の感情 (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
傷つく世代 (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
純潔 (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
早春の港 (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
妹よ (作詞: 有馬三恵子、作曲: 筒美京平、編曲: 高田弘)
バラのかげり (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)
哀愁のページ (作詞: 有馬三恵子、作曲・編曲: 筒美京平)

『シンシアのハーモニー』は、単体アルバムとしてはCDによる復刻は行われていません。しかし、本盤に収められた全収録曲は、他のCD作品で既にデジタル音源化されています。ただし、現在では入手が難しくなっている楽曲も存在し、例えば「卒業」は2008年時点では新品のCDでの入手は困難でした。収録曲の大部分である23曲は、かつてソニーミュージックから通販限定で販売された6枚組CD-BOX『Cynthia Memories』に収録されています（「哀愁のページ」は本ベスト盤とは異なるバージョン）。本盤の収録曲全てを現在のリスナーが聴くためには、複数のアイテムを探す必要がある現状です。

初期曲未収録という独自の切り口を持つ本盤は、南沙織の中期以降の音楽を知る上で重要な作品です。単体CDはないものの、他の形で音源は存在し、彼女の音楽性の広がりを知る上でファンにとって改めて注目する価値のあるベストアルバムと言えるでしょう。

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