シンシア・ラブ

南沙織の音楽キャリアにおいて重要な位置を占めるベスト・アルバムが『シンシア・ラブ』です。1977年10月1日、CBSソニーよりリリースされた本作は、彼女にとって初めての3枚組という形態をとった豪華なセレクション盤となりました。LPレコード3枚組というボリュームで、当時の南沙織の活動を網羅しています。

このベストアルバムの最大の特徴は、発売時点で発表されていたシングル曲の徹底した網羅性にあります。合計23枚のシングルから、そのA面曲である24曲すべてが収められています。特に、それぞれがA面を持つ2種類のシングル盤が存在した「気がむけば電話して」と「ふりむいた朝」は、どちらのバージョンも漏れなく収録されており、ファンにとっては非常に価値の高い構成となっています。これにより、『シンシア・ラブ』は、デビューから1977年までの南沙織のシングル曲の軌跡を一望できる作品となっています。

ただし、この『シンシア・ラブ』自体は、アルバム単体としてCD化されたことはありません。しかし、収録されている全楽曲は、後にリリースされた他のアイテムでCDとして入手可能となっています。例えば、ソニーミュージックが提供するインターネット販売サイトで現在も取り扱われている6枚組CD-BOXセット『Cynthia Memories』には、本作の収録曲が全て網羅されています。ただし、『Cynthia Memories』に収録されている「哀愁のページ」は、この『シンシア・ラブ』に収められたバージョンとは異なるテイクが採用されている点には注意が必要です。

以下に、LP3枚に収められた全36曲のトラックリストを記します。

収録曲リスト

Disk 1

Side A: 17才 (第22回紅白), 潮風のメロディ, ともだち, カリフォルニアの青い空, 純潔 (第23回紅白), 哀愁のページ
Side B: 傷つく世代, 早春の港, 夏の感情 (第25回紅白), 色づく街 (第24回紅白), ひとかけらの純情, バラのかげり

Disk 2

Side A: 夜霧の街, 女性, 田園交響楽 (『20才』より), 昼顔 (『人恋しくて』より), 粉雪の慕情 (『20才』より), 妹よ (『20才まえ』より)
Side B: 想い出通り, 夏の終り (『Cynthia Street』より), GET DOWN BABY (『Cynthia Street』より), 20才の立場 (『Cynthia Street』より), ひとねむり, 人恋しくて (第26回紅白)

Disk 3

Side A: 青春に恥じないように, 気がむけば電話して, 素顔のままで (『素顔のままで』収録), ふりむいた朝, 青い服の想い出 (『哀しい妖精』収録), 哀しい妖精 (第27回紅白)
Side B: ゆれる午後, 愛はめぐり逢いから, PEOPLE TALK （輝く瞳） (『ジャニスへの手紙』収録), 愛ほのぼの (『Hello!Cynthia』収録), いつか逢えますね (『午後のシンシア』収録), 街角のラブソング (第28回紅白)

この膨大な楽曲群は、南沙織の初期から中期にかけての活動を網羅しており、彼女の歌手としての成長や、時代の音楽シーンの変化を感じ取ることができます。特に、筒美京平、有馬三恵子といった黄金コンビによる多くのシングルA面曲に加え、松本隆、安井かずみ、荒井由実（松任谷由実）、ジャニス・イアンといった時代を代表する作家陣による多様な作品が収録されています。編曲家も当時の第一線で活躍した面々が名を連ねています。また、本作に収録されている楽曲の中には、NHK紅白歌合戦で歌唱された楽曲が複数含まれており、当時の人気ぶりがうかがえます。これらの情報は、ただのベスト盤としてだけでなく、南沙織というアーティストの足跡や、当時の日本のポップスシーンを振り返る上でも貴重な資料となっています。

『シンシア・ラブ』は、その後の南沙織のベスト盤リリースの先駆けとも言える存在であり、CD時代になってからも様々な形で再編集されたベストアルバムやCD-BOXが登場しています。これらの後続作品群と比較することで、『シンシア・ラブ』が持つ独自の選曲や構成の意味合いもより明確になるでしょう。まさに南沙織の初期キャリアを凝縮した、ファンにとっては貴重な作品集であり、その後のベスト盤の基礎ともなった記念碑的なアルバムと言えるでしょう。

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