気送管

気送管とは

気送管とは、筒状の容器を管の中に入れ、圧縮空気または真空圧を利用して輸送するシステムです。日本では「エアシューター」や「エアシュート」とも呼ばれますが、これらは和製英語です。英語では「pneumatic tube」などと呼ばれます。この技術はヨーロッパで開発され、当初は病院などで検体や書類の搬送に利用されていました。現在では、書類の電子化が進んだため、主に鉄鋼、セメント、銅精錬工場などで分析用試料の搬送に利用されています。

気送管の利用

比較的小さな容器を用いるシステムは、工場、病院、オフィスビル、宿泊施設などで、書類、現金、薬品などの実物を容器に詰め、高速に運ぶために使用されます。特に、書類や現金の輸送ニーズは電子化により減少しましたが、大型工場や大病院などの大規模事業所では、業務に関わる物資の搬送システムとして利用されています。また、大型の気送管システムは交通手段として開発された歴史もあります。

気送管の歴史

空気圧を利用して管を通して輸送するという概念は、古代アレクサンドリアのヘロンの時代にまで遡ります。1667年にはドニ・パパンの論文で初めて言及され、1806年にはフィニアス・バルクによって空気圧を交通機関として利用する発明がなされました。1886年、ビクトリア時代には、電信の通信文や電報を電信局から近隣の建物に輸送するために気送管が初めて使用されました。

実用化は1854年のイギリスを皮切りに、ドイツ（1872年）、フランス（1875年）、アメリカ合衆国（1876年）で始まりました。日本では1909年（明治42年）12月25日に、東京の江戸橋にある東京郵便電信局と兜町の東京株式取引所の間、そして東京郵便電信局と神田郵便局との間に2系統の装置が設置されたのが最初です。

気送管ポスト

気送管ポストは、圧縮空気管を使用して手紙を送るシステムです。1800年代にスコットランドの技術者ウィリアム・マードックによって発明され、後にロンドン空気輸送会社によって実用化されました。19世紀後半にはいくつかの大都市で導入されましたが、20世紀にはほとんど廃止されました。

気送管ポストの形式は、屋内運搬と屋外長距離運搬に分けられます。屋内運搬は速度が比較的遅くてもよく、空気消費量も少なくて済みますが、屋外長距離運搬は速度と空気消費量が課題となり、様々な工夫がなされました。管の直径は最小1.25インチからで、標準の2.25インチのものは主に電報用でした。大型では4インチ×7インチのものもありましたが、日本では使用されませんでした。ドイツでは、容器を用いずに厚紙の一端を折り曲げてそのまま送る扁平管の気送管もありました。

フランスのパリでは1866年から気送管を用いた手紙の配送システムを構築し、1934年にはパリの全郵便局136箇所が気送管で結ばれ、数十分で手紙が目的地に到着していました。このシステムは1984年まで稼働していました。日本においては、東京、大阪、神戸の中央電信局と市内局との間で利用されたほか、東京中央電信局の受付と通信室のような局内搬送用にも利用されました。東京中央電信局の天井からは数十本の真鍮管が下り、市内22局と連絡し、1日に1万数千通を取り扱っていました。

第二次世界大戦までの巡洋艦以上の軍艦では、無線電信室が艦橋構造物の下の艦内に設置されることが多かったため、艦橋との間で電文や原稿をやり取りするために気送管が設置されていました。

気送交通

1812年にはジョージ・メドハーストにより、気送管で人員を輸送する交通機関が考案され、後に大気圧鉄道として実現しました。

大気圧鉄道の例

1844-54: ダブリン アンド キングストン鉄道
1846-47: ロンドン アンド クロイドン鉄道
1847-48: サウス デボン 鉄道 (イザムバード・キングダム・ブルネルによる)
1847-60: パリ–サン＝ジェルマン 鉄道 (フランス、ボワ・ド・ヴェジネとサン＝ジェルマン＝アン＝レー間)
1870-73: ニューヨーク市のビーチ・ニューマチック・トランジット

また、1960年代には、ロッキードとマサチューセッツ工科大学が、商務省の援助を得て、大気圧と振り子の力で減圧チューブ内を時速626kmで走行可能な交通機関の研究を行っていました。

関連技術

気送管に関連する技術としては、以下のものが挙げられます。

スイスメトロ
英仏海峡トンネル
大気圧鉄道
大陸間トンネル
真空チューブ列車
ニューヨークの郵便気送管
ビーチ・ニューマチック・トランジット
カタパルト

現代のエンターテイメントでの利用

気送管は、過去のクイズ番組やバラエティ番組でも利用されたことがあります。

知ッテレビジョン（フジテレビ）：解答者が答えを書いたものを筒に入れ、エアシューターで自席から司会者席まで送る。
* 月曜から夜ふかし（日本テレビ）：VTR内容が書かれたカードを筒に差し込み、エアシューターでLED表示板に送る。

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