水沼四郎

水沼 四郎（みずぬま しろう）

1947年2月27日、兵庫県尼崎市に生まれた水沼四郎は、日本の元プロ野球選手であり、指導者、そして解説者としても知られています。

アマチュア時代

兵庫県の報徳学園高校に進学し、野球部では捕手としてプレーしました。1964年には春の選抜高等学校野球大会に出場。1回戦では東邦高校にサヨナラ勝利を収めるも、2回戦では後にプロゴルファーとして名を馳せる尾崎将司投手がいた徳島海南高校に惜しくも敗れました。同年の夏の甲子園県予選では、準決勝で育英高校の鈴木啓示投手に抑えられ、甲子園出場はなりませんでした。高校の同期には基満男、三宅昇らがいます。

卒業後、同期の長坂正稔、三宅昇とともに中央大学へ進学。東都大学野球リーグで、1年生から高橋善正投手らと共にバッテリーを組み、中心選手として活躍しました。1967年春季リーグでは宮本幸信投手の好投に助けられ優勝を経験。同年の全日本大学野球選手権大会でも決勝で慶応義塾大学を下し、大学野球日本一に輝きました。大学リーグ通算成績は、94試合に出場し、322打数65安打、打率.202、7本塁打、30打点を記録。ベストナインにも2度選出されています。

プロ野球選手として

中央大学卒業後、1968年のドラフト会議で広島東洋カープから2位指名を受け入団しました。入団当初、広島の捕手陣は田中尊や久保祥次といった選手が定位置を争っていましたが、水沼は徐々に頭角を現します。

1971年には正捕手として起用される機会が増え、同年8月19日の中日ドラゴンズ戦では、藤本和宏投手とバッテリーを組み、ノーヒットノーラン達成をサポートしました。

しかし、1972年にはシーズン前半を怪我で離脱し、久保祥次に定位置を譲ることになります。7月には復帰を果たしたものの、正捕手の座は再び競争となりました。1974年には打撃力の高い西沢正次にポジションを譲りますが、同年末に西沢が移籍したことで、再びレギュラー捕手の座を取り戻しました。

1975年、広島カープが球団史上初のリーグ優勝を達成した際には、正捕手としてチームを牽引。阪急ブレーブスとの日本シリーズでは、シーズン後半に台頭した道原裕幸が主に先発出場しましたが、水沼も全6試合に出場し、投手陣を献身的に支えました。

1976年シーズンも開幕当初は道原が起用されますが、5月には再び正捕手の座を奪還。1978年にはキャリアで初めてシーズンを通じて119試合に先発マスクを被り、規定打席にも到達（打率.271でリーグ30位）。

広島カープが1979年、1980年と連続して日本一に輝いた黄金期において、水沼は扇の要として欠かせない存在でした。特に1979年の近鉄バファローズとの日本シリーズでは、全7試合に先発出場。勝負所の第7戦では6回に柳田豊投手から勝ち越しの2点本塁打を放ち、これが決勝点となりました。9回裏、「江夏の21球」として語り継がれる場面で、江夏豊投手の球を受けたのも水沼でした。翌1980年の日本シリーズでも再び近鉄と対戦し、全7試合に先発出場。第3戦では9回に井本隆投手から決勝タイムリー二塁打を放つなど、ここでも重要な場面で打撃力を発揮しました。

しかし、1981年7月15日に同僚の運転する車に同乗中、交通事故に遭い、頭部に重傷を負いました。この影響で一時的に正捕手の座を道原に譲りますが、8月には復帰。それでも、若い達川光男捕手の成長もあり、この年以降は出場機会が減少していきました。

1983年、中日ドラゴンズへコーチ兼任選手として移籍。同年限りで現役を引退しました。

現役引退後

現役引退後は、1984年から1986年まで中日ドラゴンズでバッテリーコーチを務めました。その後、当時の横浜大洋ホエールズ監督だった古葉竹識氏の招聘を受け、スカウトに転身。スカウト活動と並行して、読売テレビや広島テレビの野球解説者としても活動しました。

1997年に広島市へ戻り、少年野球の指導に情熱を注ぐ傍ら、東広島市でお好み焼き店「しろう」を経営。約14年間営業しましたが、2007年5月24日に脳梗塞で倒れ、一時閉店を余儀なくされました。リハビリを経て回復後、広島市中区で同名の居酒屋を開店。この店舗は2015年2月22日に「カープ100円食堂」としてリニューアルし、現在は夫人と共に実業家として手腕を発揮しています。孫の山本彩加氏は、ソフトテニス選手としてNTT西日本広島に所属し活躍しています。

選手としての特徴

打撃力は特別秀でていたわけではありませんが、捕手としての能力は非常に高く評価されていました。サインなしでも球を受けることができる確かなキャッチング技術、冷静かつ大胆なリード、そして捕手としては珍しい俊足が持ち味でした。これらの能力を活かし、チームの「要」として、1971年からの約10年間、広島カープの正捕手として守備面でチームを支え続けました。後にカープの正捕手となる達川光男氏も、高校卒業時にプロからの誘いがあったものの、水沼の存在を見て「水沼さんがいるから出場機会は少ないだろう」「大学で実力をつけてからプロを目指そう」と考えた、と後に語っています。これは、当時の水沼の捕手としての実力がいかに高く評価されていたかを物語るエピソードと言えるでしょう。

記録・背番号

初記録
初出場：1969年4月12日 対中日ドラゴンズ戦（広島市民球場）、代走で出場
初先発出場：1969年5月7日 対阪神タイガース戦（阪神甲子園球場）、8番・捕手で先発
初本塁打・初打点：1969年6月14日 対阪神タイガース戦（阪神甲子園球場）、鈴木皖武からソロ
節目の記録
1000試合出場：1979年7月13日 対阪神タイガース戦（阪神甲子園球場）、史上210人目

背番号
広島東洋カープ：39（1969年 - 1973年）、22（1974年 - 1982年）
* 中日ドラゴンズ：66（1983年）、86（1984年 - 1986年、コーチ）

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