水無平湿原

水無平湿原（みずなしだいらしつげん）は、富山県南砺市利賀村水無に広がる、面積およそ50ヘクタールの湿原です。別称として水無平や水無湿原とも呼ばれます。この湿原一帯は白木水無県立自然公園の区域内に含まれており、湿原を含む約216ヘクタールは中部森林管理局によって保護林として指定されています。

概要

水無山の山麓、定倉谷の上流部に位置する水無平湿原は、南北に約3キロメートル、南端で約300メートル、北端で約50メートルの幅を持つ、約0.5平方キロメートルにおよぶ盆地状の地形をしています。湿原の周囲は豊かなブナ林に囲まれています。この地には、葉に特徴的な斑点を持つミズバショウをはじめ、様々な種類の高山植物が自生しており、夏季には多くの来訪者でにぎわいます。

湿原へのアクセスは林道を通じて可能ですが、利賀行政センターからは約25キロメートルの距離があり、車での移動にはおよそ1時間半を要します。この林道は険しい箇所があるため、通行には十分な注意が必要です。

自然

水無平湿原では、希少種であるヤシャビシャクやヨウラクツツジなどが確認されています。主要な植物群としては、ミズバショウやリュウキンカといった湿性の植物のほか、コバイケイソウ、カタクリ、ヤマトリカブトなどの山野草が見られます。また、富山県内では珍しい種として、クワガタソウ、トモエシオガマ、カラスシキミ、ミズトンボ、ハクサンチドリ、ノビネチドリ、ショウキランなどが挙げられます。

水無平の盆地内には多くの渓流が流れていますが、これらが排水の役割を果たすため、予想外に乾燥した状態を示す箇所もあります。このため、最も広く見られる植生の一つとして、ブナ林への移行段階とされるネマガリダケの風衝草原が挙げられます。

周辺の湿原

水無平湿原の周辺には、いくつかの特徴的な湿原が点在しています。

定倉谷を下流に進んだ左岸、標高1220メートル地点には定倉湿原があります。この湿原は、長軸約100メートル、短軸約30メートルの三角形に近い形状をしており、リュウキンカとミズバショウを中心とした群落が見られます。ゼンテイカやコバイケイソウ、ニリンソウなども生育しています。

定倉湿原よりやや上流、標高1240メートル地点には小池湿原があります。この湿原は、長さ約200メートル、幅約40メートルの長方形に近い形をしており、ヨシ、ヒメイチゲ、キクザキイチゲ、ゼンテイカ、ショウジョウバカマ、ワレモコウ、ワタミズゴケ、ホソバミズゴケなど多様な植物で構成されています。渓流上にはリュウキンカが単純な群落を形成しています。

これら定倉湿原と小池湿原で見られるミズバショウは、水無平湿原と同様に全て葉に斑点が入っているという特徴があります。

定倉谷の水系とは異なる隣接した水系には、小アテビョウ湿原が存在します。この湿原は昭和44年（1969年）8月3日に初めて本格的な調査が行われました。長径約400メートル、短径約200メートルの範囲に灌木が入り込んでいる比較的小さな湿原ですが、その植生は非常に豊かです。特筆すべき種として、チョウジギク、トモエシオガマ、ヤマクワガタ、エゾシロネ、エゾリンドウ、シラヒゲソウ、サジバモウセンゴケ、ヤマトリカブト、エンコウソウ、ミズチドリ、タマガワホトトギス、カワズスゲ、ミカズキグサ、クロアブラガヤ、イブキシダ、ワタミズゴケなどが確認されており、中には富山県内で他に類を見ない珍しい種も少なくありません。

これらの湿原群は、中部山岳地域の豊かな自然環境を今に伝える貴重な場所となっています。

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