水無瀬家

水無瀬家：平安から明治へ続く名家の歴史と文化

水無瀬家は、藤原北家隆家流を祖とする由緒ある公家・華族です。平安時代中期、藤原隆家の次男・経輔が「水無瀬大納言」と呼ばれたことに由来し、その子孫が水無瀬家を形成しました。家格は羽林家、華族制度下では子爵家に列しました。家紋は菊です。

水無瀬家の歴史は、後鳥羽上皇との深い関わりに深く結びついています。承久の乱後、隠岐に流された上皇の遺言により、信成が水無瀬離宮跡に御影堂（水無瀬神宮）を建立、上皇の菩提を弔ったことが、水無瀬家を名乗る契機となりました。この御影堂への奉仕は、室町時代以降の禁裏小番の免除につながったと伝えられています。

戦国時代には血統が途絶えましたが、歌道で知られる三条西家から養子を迎えたことで、水無瀬家は和歌の伝統も受け継ぐことになります。

水無瀬家は、書道でも名を残しました。4代にわたって活躍した書家たちは、将棋の駒に銘を刻み、「水無瀬駒」として高く評価されました。後陽成天皇や豊臣秀次、足利義昭、徳川家康といった権力者にも献上され、特に兼成と兼俊の作品は有名です。水無瀬神宮には、彼らの作品が今も残されています。兼成の駒製作記録『将棊（しょうぎ）馬日記』は、貴重な資料として知られています。江戸時代の家禄は631石でした。

明治維新後、華族制度が成立すると、水無瀬家は公家として華族に列しました。明治17年（1884年）、華族令の施行により、忠輔が子爵に叙せられました。これは、大納言直任の例がない旧堂上家としての特例措置でした。その子忠政は貴族院の子爵議員を務めました。水無瀬子爵家の邸宅は、大阪府三島郡島本町にありました。

水無瀬家の人物としては、藤原親兼、水無瀬信成、優れた書家にして駒師であった水無瀬兼成、兼俊などが有名です。また、氏信の娘である右衛門佐局は江戸城大奥女中として仕え、忠輔の娘静子は久邇宮分家多嘉王の妃となりました。

水無瀬家は、平安時代後期から明治時代まで続く、歴史と文化に彩られた名家です。後鳥羽上皇とのゆかり、優れた書家や将棋駒師の輩出、そして華族としての地位など、その歴史は多岐に渡り、日本の歴史文化の一端を担った存在と言えるでしょう。水無瀬神宮との深い関わりも、水無瀬家を知る上で欠かせない要素です。 彼らの歴史は、単なる貴族の歴史にとどまらず、日本の美術、文化、そして政治にまで影響を与えた、重要な一家の歴史と言えるでしょう。

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