氷上川継の乱

氷上川継の乱の背景と概要

氷上川継の乱（ひがみのかわつぐのらん）は、奈良時代の反乱未遂事件であり、天応2年（782年）に発生しました。この事件は、天武[[天皇]]の曾孫である氷上川継が、皇位を狙って謀反を企てた結果、未遂に終わったことが特徴的です。

事件の背景

宝亀元年（770年）の8月、称徳天皇の崩御を経て、皇位は天智[[天皇]]の孫である白壁王（光仁[[天皇]]）に移行しました。天武[[天皇]]の血を引く皇族たちは、数々の政変によってその多くが命を落としたり、臣籍降下に追いやられるなど、厳しい状況に置かれていました。称徳天皇の崩御に伴い、天武系の嫡流による皇位の継承が途絶え、天智系の天皇が復活することとなったのです。光仁[[天皇]]の即位は、彼が聖武天皇の娘との結婚により天武系と血縁があったことが影響しています。

氷上川継は、天武[[天皇]]の血を引く重要な存在でしたが、父の塩焼は反乱の影響で命を落とし、母の不破内親王も称徳天皇に背いて身分を剥奪されていました。こうした事情から、川継は皇位継承の候補には挙げられていなかったものの、その血統は反政府勢力に期待されつつも、朝廷には警戒の対象とされていました。

事件の発生

天応元年（781年）の4月、光仁[[天皇]]は皇太子の山部親王（後の桓武天皇）に譲位し、年末には光仁[[天皇]]が崩御する事態が発生しました。また、桓武天皇の異母弟、薭田親王が急死するという出来事もあり、これは川継の乱の一因と見なす研究者もいます。

天応2年（782年）の閏正月10日、川継の仲間である大和乙人が武器を帯びて宮中に侵入し、激しい緊張が走りました。発覚した乙人は尋問の結果、川継を首謀者とする謀反計画を自白し、決行の日に川継が他の同士と共に平城宮に襲撃を仕掛ける予定だったことが明らかになりました。この報告を受け、川継を召喚するための勅使が派遣されましたが、川継は逃亡し、その後大和国葛上郡で捕まることになります。

事件の後処理

事件の結果、川継は死罪に相当する罪を負いましたが、光仁[[天皇]]の死により一等減じられ、伊豆国への流刑となりました。妻の藤原法壱もともに流罪となり、川継の姉妹や母も土地を追われる結果となりました。さらに、罪に連座した者たちの多くが官職を解かれ、朝廷における政治的地位は大きく変わりました。具体的には、山上船主や三方王が左遷された他、重要な宮廷の公卿たちも職を失い、氷上川継の乱は奈良時代の政治的混乱の一端を象徴する出来事となったのです。

このような過程を経て、後の天武系皇族は完全に皇位継承から排除され、歴史の舞台から姿を消すこととなりました。後に川継は、延暦24年（805年）に罪が赦され、帰京しますが、その際の官職復帰は限定的でした。事件による余波は長く続き、当時の藤原京家が凋落の道を辿ることに繋がっていきます。このように、氷上川継の乱は、奈良時代の政治的動乱の中で重要な一幕を成した事件だったと言えるでしょう。

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