永久磁石同期電動機

永久磁石同期電動機について

永久磁石同期電動機（PMSM）は、回転子に永久磁石を用いた特異な電動機で、エネルギー効率と軽量化に優れた特性を持っています。このモーターの重要な特徴として、制御回路が別に設置されている点が挙げられます。ここでは、PMSMの特性、注意点、応用分野について詳しく説明します。

特徴と利点

PMSMの利点には、以下のような点があります。

1. 高効率と軽量化: 他の電動機（誘導電動機や電磁石同期電動機）と比較して、二次銅損がないため、エネルギー効率が高く、小さく・軽量に設計できます。このため、特にスペースが限られる場合に適しています。

2. 保守の容易さ: バラスト、整流子、ブラシ、スリップリングなどが不要であるため、保守が簡単です。また、界磁の損失による過熱がないため、温度上昇への保護措置も必要ありません。ただし、使用している永久磁石がキュリー温度に近づくことによって強度が低下する可能性があります。

3. 優れた速度制御精度: 電源の周波数によって回転速度が決まるため、負荷に左右されることなく、非常に高い速度制御精度を提供します。

これらの利点により、PMSMは、特に蓄電池駆動の電車や狭軌鉄道に適しています。

注意点

一方で、PMSMを使用する際にはいくつかの注意事項があります。

• - 専用のインバータが必要: 商用電源から直接動作することができず、可変電圧・可変周波数制御（VVVF）のインバータが必須です。

• - 個別のインバータ制御: 1台の電動機に対して1台のインバータが必要であり、これは効率的な設計やコスト面での課題となることがあります。

• - 常時発電してしまう惰行: 惰行時にも常に発電を行うため、遮断器を使用する必要がある場合があります。これは、電気自動車やハイブリッド車ではエンジンブレーキのように回生ブレーキとして利用されることがあります。

また、センサーレス制御の際には、高トルク負荷の場合に脱調する恐れがあったり、起動時に逆回転する可能性があるため、設計には注意が必要です。

用途

PMSMは、さまざまな産業や機器に応用されています。具体的には以下の用途があります。

• - 電気自動車・ハイブリッドカー: エネルギー効率の高さから、近年特に注目されています。
• - 鉄道車両: 鉄道用では、東芝が技術開発を進めており、誘導電動機に代わっての採用が進んでいます。
• - エレベーターや家庭用電化製品: エアコンや冷蔵庫、洗濯機などにも利用されており、効率的な運転が求められる場面でその性能が発揮されています。

分類

PMSMは、さらに「埋込構造永久磁石同期電動機（IPM）」と「表面構造永久磁石同期電動機（SPM）」に分類されます。前者は永久磁石を内部に埋め込み、高効率で安定した運転が可能です。後者は表面に磁石を配置することで、磁束密度を最大限活用することができますが、高速回転時に不具合が生じる恐れがあります。両者とも、専用インバータによって高効率の電圧波形で励磁され、最適な運用がなされます。

このように、永久磁石同期電動機は現在、様々な分野でその利点が反映され、効率的な電動機としての地位を確立しています。

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