永井潔

永井潔（ながい きよし）は、1916年8月24日に生まれ、2008年9月8日に没した日本の画家です。彼の芸術活動は、絵画制作にとどまらず、教育、装幀、社会運動など多岐にわたりました。

生い立ちと初期の活動

永井潔は、群馬県前橋市で生まれました。父は新潟県三条市出身の教育者であり、母は京都本阿弥家の末裔という家系に育ちました。娘には劇作家の永井愛がいます。彼は、画家としての道を志し、硲伊之助らに師事し、二科番衆技塾、本郷岡田三郎助美術研究所で学びました。若き日から、美術の研鑽を積み、その才能を開花させていきました。

戦争と社会運動

1938年、永井は朝鮮羅南に動員され、張鼓峰事件で負傷し入院生活を送りました。その後、治安維持法で検挙されるなど、戦時下の厳しい状況を経験しました。戦後は、日本美術会の創立に参加し、事務局長や附属民主主義美術研究所所長を務め、美術を通じた社会変革を目指しました。また、リアリズム研究会の結成にも参加し、社会的な視点を持った美術活動を推進しました。

画家としての活動

永井潔は、一水会優賞やさくら新人賞を受賞するなど、画家としても高い評価を受けました。彼の作品は、油彩、水彩、素描など多岐にわたり、風景画や人物画、社会的なテーマを扱った作品など、幅広い表現を追求しました。また、書籍の装幀や児童書の挿絵も手がけ、絵本雑誌『キンダーブック』や、山代巴『荷車の歌』、村山知義『ウィリアム・テル』、筑摩書房『新版小学生全集』、講談社『少年少女世界文学全集』など、数多くの書籍の装幀や挿絵を担当しました。その挿絵は、子どもたちに夢と感動を与えました。

教育者としての活動

永井潔は、学校法人中央労働学園の理事長を務め、東京文科アカデミーや武蔵野外語専門学校の理事長・校長を歴任しました。教育者としても、美術を通じて社会に貢献しようと努め、後進の育成に力を尽くしました。

晩年

晩年は、自身の作品を振り返る回顧展を開催したり、画集を刊行したりするなど、精力的に活動しました。2006年には、戦前戦後の作品を展示する「永井潔展」を開催し、その画業を広く紹介しました。2008年には、逝去されましたが、彼の作品と功績は、今もなお多くの人々に影響を与えています。

永井潔の著書

永井潔は、画家としての活動だけでなく、多くの著書も残しました。

『芸術論ノート』（新日本出版社） 1970年
『芸術の伝統と創造』（大月書店） 1974年
『芸術と自由』（新日本出版社） 1978年
『反映と創造　芸術論への序説』（新日本出版社） 1981年
『永井潔画集』（永井潔画集刊行委員会） 1994年
『絵で読む名作小説 - 永井潔挿絵画集』（光陽出版社） 2006年
『永井潔画文集 絵と写真でたどる芸術の旅』（みずさわ画廊） 2008年
『戦後文化運動・一つの軌跡』（光陽出版社） 2008年

これらの著書を通じて、彼の芸術観や社会観を深く知ることができます。

まとめ

永井潔は、画家、教育者、社会運動家として、多岐にわたる活動を通して、日本の美術界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、美術史の中で重要な位置を占めており、その芸術活動は今後も多くの人々を魅了し続けるでしょう。

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