永楽 (高句麗)

永楽（えいらく、영락）

高句麗の第19代王である好太王が用いた元号『永楽』は、紀元391年を元年とする初めての元号とされており、特にその歴史的意義は深いものがあります。『好太王碑』でその存在が確認できる一方で、韓国の古典文献『三国史記』などにはこの元号に関する記述が見受けられません。これは高句麗が中国皇帝の権威に挑戦する独自の元号を採用することで、支配される立場からの脱却を図ったことを示しています。

背景

好太王の即位に伴い、永楽という元号が導入されました。好太王は、中国皇帝が天帝の子として天下を支配するという理念に立脚した元号の使用を通じて、中国に対する高句麗の従属を示していました。元号の創設は、独自の権威を打ち立てる意志の現れであり、高句麗の独立を象徴する重要なステップとなります。

中国において元号は、政治的・社会的な意味合いを持ち、それを用いることは中央集権的な権力の象徴でありました。高句麗が独自の元号を用いることは、直接的に中国皇帝に対する挑戦と解釈され、その宣言はただの動詞でなく、民族独立の意識をも含むものでした。

年代の比定

『好太王碑』に記されている例から、永楽元年は391年（辛卯年）とされています。好太王の治世は22年にわたり、永楽年号がその終わりまで用いられたことも推測されます。しかし、『三国史記』において好太王の即位年に関する記録が異なることもあり、若干の年数の食い違いがある点には注意が必要です。

永楽年号の使用例

好太王による永楽年号の具体的な使用例は以下の通りです。

• - 永楽五年 - 年は乙未
• - 永楽六年 - 年は丙申
• - 永楽八年 - 年は戊戌
• - 永楽九年 - 年は己亥
• - 永楽十年 - 年は庚子
• - 永楽十四年 - 年は甲辰
• - 永楽十七年 - 年は丁未
• - 永楽廿年 - 年は庚戌

このように、好太王は治世の中で様々な年にわたって元号『永楽』を用いることを通じて、その政治的意図と高句麗の独立した国としての存在を示し続けました。元号の制度は当時の世界において権力の象徴ともなっており、その採用は高句麗の国力強化の表れとも言えます。

参考文献

• - 金富軾 著、井上秀雄 訳『三国史記』 第2巻、平凡社〈東洋文庫425〉、1983年。
• - 金富軾 著、井上秀雄 訳『三国史記』 第3巻、平凡社〈東洋文庫454〉、1986年。
• - 一然 著、坪井九馬三・日下寛 訳『三国遺事』国立国会図書館〈文科大学史誌叢書〉、1904年。

関連項目

• - 永楽 (張遇賢) - 五代十国時代の南漢・南唐の元号。
• - 永楽 (方臘) - 北宋に方臘が建てた私元号。
• - 永楽 (明) - 明の永楽帝の元号。

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