永福寺 (京都市)

永福寺（えいふくじ）

永福寺は、京都市中京区新京極蛸薬師東側町に位置する浄土宗西山深草派の寺院です。この寺の山号は浄瑠璃山であり、本尊は薬師如来（通称蛸薬師）です。通称として蛸薬師堂とも呼ばれ、地域の人々から親しまれています。

歴史的背景

永福寺は1190年頃、僧林秀の夢の中に薬師如来が現れ、彼に自らの石仏を掘り起こすように告げたことから始まりました。林秀がその指示に従い、比叡山から薬師如来の石仏を掘り出すと、その石仏を本尊とした堂を二条室町に建立しました。これが永福寺の起源です。霊験があらたかであったため、1441年には後花園天皇の勅願寺にもなりました。

中世になると、寺は俗称「蛸薬師」と呼ばれるようになり、1590年には豊臣秀吉による寺町の建立に伴い、現在の新京極に移転しました。その結果、蛸薬師を参拝するための通りは「蛸薬師通」と名付けられました。

ただし、明治時代に入ると廃仏毀釈の影響を受け、また新京極通の開設により、寺院の境内が狭められる事態が続きました。その結果、寺は現在の形に至っています。またその境内には、法性山無量寿院妙心寺という、もう一つの寺院も存在し、永福寺が管理しています。

蛸薬師の由来

「蛸薬師」という名の由来には二通りの説があります。一つは、永福寺があった二条室町の地域にあった池から来ているというものです。この池が水上薬師や澤薬師と呼ばれ、次第に「たく」が「蛸」に変わったと言われています。もう一つの説では、鎌倉時代の僧善光が病の母のために市場でタコを手に入れ、薬師如来に祈った故事に基づいています。この際、タコが光を放ちながら法華経に変化したという伝説があります。

この出来事を目撃した町の人々は母親の病気回復を願い、タコが再び現れることで、永福寺は「蛸薬師堂」としての名声を得、親しみを込めて「蛸薬師さん」と呼ばれるようになったのです。

境内の構造

永福寺の境内には様々な重要な施設があります。中心的な建物である本堂は、蛸薬師堂として知られ、ここに本尊の蛸薬師が祀られています。また、庫裏や妙心寺も境内に存在し、それぞれ阿弥陀堂として信仰されています。

加えて、梵鐘（松平親正による寄進）、豊川稲荷、福地稲荷、秋葉権現、山門などもあり、訪れる人々は様々な信仰対象に触れることができます。

近隣の札所

永福寺は京都十二薬師霊場の一つとして位置づけられており、前後には十一番の西光寺、そして次の十二番の永福寺が存在します。この霊場巡りは、多くの人々が精神的な旅を楽しむために訪れる場所となっています。

禅の歴史や信仰の深みを感じさせる永福寺は、京都の文化と歴史において重要な位置を占めており、地域の人々に愛され続けています。観光客だけでなく、地元の信者にも親しまれるこの場所を訪れることで、心の平安を得ることができるでしょう。

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