永遠平和条約

永遠平和条約（グジムフトフスキ条約）とは

永遠平和条約（ロシア語：Ве́чный мир、ポーランド語：Pokój Grzymułtowskiego）は、1686年5月6日にモスクワで、ロシア・ツァーリ国とポーランド・リトアニア共和国の間で締結された条約です。この条約は、ウクライナのコサック国家を分割することを主な目的としていました。

条約は、同年2月から行われた平和交渉の末に締結され、ポーランド王ヤン3世とロシアの摂政ソフィア・アレクセーエヴナが署名しました。ポーランド・リトアニア側からは、ポズナン県知事クシシュトフ・グジムフトフスキとリトアニア宰相マルツャン・オギニスキが、ロシア側からは使節省長官ヴァシーリー・ゴリツィンが署名しています。

この条約は、長年にわたるロシア・ポーランド戦争を終結させ、オスマン帝国によるウクライナへの進出を防ぐための手段としての役割も担いました。

条約の内容

永遠平和条約は、1667年のアンドルソヴォ条約を基に作成され、全33条から構成されています。その主な内容は以下の通りです。

ウクライナの分割: ドニプロ川を国境として、左岸ウクライナをロシア領、右岸ウクライナをポーランド領とします。
ザポロージャ地方の割譲: ポーランドは、コサックのザポロージャ地方の統治権をロシアに譲渡します。
キエフの割譲: ポーランドは、右岸ウクライナに位置するキエフとその周辺地域を永久にロシアに割譲します。その代償として、ロシアはポーランドに14万6千ルーブルを支払います。
無人地帯の設定: 右岸ウクライナのドニプロ川沿いの地域（ルジーシチウ、チェルカースィ、トラフテムィーリウ、カーニウ、チヒルィーンなどの町）を無人の地域と定めます。
正教徒の権利保障: ポーランドは国内における正教徒の信仰の自由を認め、ロシアはポーランドの正教徒を保護する権利を得ます。
対オスマン政策: ロシアは、オスマン帝国との条約を破棄し、神聖同盟（教皇領、ヴェネツィア共和国、神聖ローマ帝国、ポーランド・リトアニア共和国の同盟）に加わり、オスマン帝国及びクリミア・ハン国と戦うことを約束します。また、クリミアへの出兵（大トルコ戦争、1687年・1689年）も約束しました。
* 条約の即時施行: 条約は締結日の1686年5月6日に施行されるものとします。

条約の影響と評価

永遠平和条約は、ロシアとポーランドの同盟を成立させ、東ヨーロッパにおけるイスラム勢力の排除を促進する原動力となりました。

しかし、条約はロシアにとって有利な内容であったため、ポーランド国内には不満を持つ人々も多く、批准は1710年まで遅れました。また、ウクライナのコサック社会においては、反ポーランド、反ロシアの思想が広まり、親ロシア派の政治家でさえもロシアを批判する状況を生み出しました。

この条約は、その後の東ヨーロッパの政治状況に大きな影響を与え、ウクライナの歴史においても重要な転換点となりました。

もう一度検索