汎歯目

汎歯目（はんしもく）についての考察

汎歯目は、新生代初期に存在した絶滅した大型草食性哺乳類の一群であり、化石の記録からは、初期の大規模な草食動物として位置付けられています。英語ではPantodontaと呼ばれ、全歯目とも訳されることがあります。

特徴と形態

汎歯目の特徴は、非常に多様な体形を持つことにあります。例えば、樹上性と考えられる軽やかな体を持つアルケオラムブダから、地上性のバリラムブダや水生生物に似たコリフォドンまで、幅広い体型の種が確認されています。ある種では短い鼻を持ち、四肢は一般的に短く頑丈で、5本全ての趾が保持されています。足先は小さな蹄のような構造を持つものや、特定の種では小さな鉤爪を持つものも存在しました。

汎歯目の歯は、その構造の完璧さで知られています。特に大臼歯にはW字型の鋭い縁があり、その発掘された化石はあまり磨耗が見られないことから、主に軟らかい植物を食べていた推測されています。

進化の視点

汎歯目の起源は暁新世初期にまで遡ります。最古の種であるベマラムブダは、20cm以上の長さを持ち、大型犬ほどのサイズに達しました。このグループは北アメリカで暁新世中期から始新世中期にかけて進化し、特にティタノイデスなどの種は、サイのサイズまで成長しました。一方で、小型の種も存在しており、体重は10kg未満のものも確認されています。

化石の調査によって、汎歯目は南アメリカや南極大陸にも生息していたことが明らかになっています。日本国内では、熊本県等からコリフォドン属の化石が発見されています。このことから、汎歯目は広範な地域に生息していたことが伺えます。

系統の変遷

過去には、汎歯目は初期の顆節目から派生し、恐角目に近縁であると考えられていましたが、分岐分類学の進展により、紐歯目などとの近縁性が指摘されています。最新の分類体系では、汎歯目は他のいくつかの目とともにキモレステス目という上位分類群を形成しています。

下位分類（科）

汎歯目はおおよそ10の科に分類され、その最も原始的な系統がベマラムブダ科です。その他の科はエウパントドンティアとしてまとめられていますが、場合によってはベマラムブダ上科、コリフォドン上科、パントラムダ上科の3つの上科に分けられることもあります。

• - ベマラムブダ上科（Bemalambdoidea）

- ベマラムブダ科（Bemalambdidae）
- エウパントドンティア（Eupantodontia）
- アルケオラムブダ科（Archaeolambdidae）
- バリラムブダ科（Barylambdidae）
- コリフォドン科（Coryphodontidae）
- シリアコテリウム科（Cyriacotheriidae）
- ハルピオドゥス科（Harpyodidae）
- パントラムブダ科（Pantolambdidae）
- パントラムブドドン科（Pantolambdodontidae）
- パストラロドン科（Pastoralodontidae）
- ティタノイデス科（Titanoideidae）

このように、多様な形態と進化の背景を持つ汎歯目は、我々が哺乳類のルーツを理解するために重要な役割を果たしています。

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