池上幸豊

池上幸豊（いけがみ ゆきとよ）は、1718年（享保3年）に生まれ、1798年3月31日（寛政10年2月15日）に没した、江戸時代中期の豪農です。通称を太郎左衛門（たろうざえもん）といい、与楽（よらく）という号も持っていました。

池上氏は、藤原忠平の末裔を称し、日蓮に帰依して池上本門寺を創建したとされる家柄で、幸豊は池上宗仲から数えて24代目にあたります。近世初頭、曽祖父にあたる幸広（ゆきひろ）の代に武蔵国橘樹郡大師河原村に移住し、代々名主を務めました。幸広から幸忠（ゆきただ）、幸定（ゆきさだ）と続き、1729年に幸定が亡くなると、当時12歳であった嫡男の幸豊が家督を継ぎ、名主となりました。

幸豊は、寛延3年（1750年）に江戸幕府に対し、多摩川の砂州を埋め立てて新田開発を行うことを願い出ました。そして、宝暦11年（1761年）にこの新田開発を完成させ、「池上新田」と名付けました。同年には、氷砂糖の製法を改良し、製造の権利を得るなど、先進的な取り組みを行っています。翌年には幕府から新田見立役に任じられ、江戸周辺の新田開発に適した土地の調査にもあたりました。

また、幸豊は、大師河原塩田の経営、氷砂糖製造に必要な甘蔗の栽培、芒硝（ぼうしょう）・絞油（しぼりあぶら）の製造、魚の養殖など、多岐にわたる事業を積極的に展開しました。これらの事業を通じて、農村の振興に大きく貢献しました。

著書として『種芸拾穂集（しゅげいしゅうすいしゅう）』があり、和歌にも親しんでいたことが知られています。幸豊の功績は後世にも評価され、大正13年（1924年）には従五位を追贈されました。

池上幸豊は、単なる豪農にとどまらず、優れた経営手腕と先見の明を持ち、地域社会の発展に尽力した人物として、歴史に名を残しています。

参考文献

北原進「池上太郎左衛門」『日本史大事典 1』（平凡社 1992年）ISBN 978-4-582-13101-7
白川部達夫「池上太郎左衛門」『日本歴史大事典 1』（小学館 2000年） ISBN 978-4-095-23001-6

関連項目

大師町
洗足池

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