大師町

大師町（だいしまち）

大師町は、1923年（大正12年）1月1日から1924年（大正13年）7月1日まで、現在の神奈川県川崎市川崎区東部に存在した町です。本項では、前身である大師河原村についても解説します。

概要

大師町は、橘樹郡の東部に位置し、現在の川崎市川崎区東部にあたります。多摩川が近くを流れ、古くから農業が盛んな地域でした。

地理

多摩川が町の近くを流れていました。

歴史

沿革

戦国時代：大師河原という地名が初めて記録に登場します。
江戸時代：大師河原村、池上新田、稲荷新田（いずれも幕府領）、川中島村（幕府領、大師領、稲荷明神社領）が成立しました。
1868年（明治元年）：旧暦6月17日に神奈川府の管轄となり、同年9月21日に神奈川県と改称されました。
1874年（明治7年）：大区小区制の施行により、大師河原村、池上新田、川中島村、稲荷新田は第4大区第2小区に属しました。
1875年（明治8年）：川中島村と稲荷新田が大師河原村に編入されました。
1889年（明治22年）：町村制施行により、大師河原村、池上新田、新宿町、砂子町、中島村の飛地が合併し、新たな大師河原村が成立しました。旧大師河原村の飛地は田島村、川崎町の一部となりました。
1912年（明治45年）：「東京府神奈川県境界変更に関する法律」が施行され、東京府荏原郡羽田町の一部を編入しました。
1923年（大正12年）：大師河原村が町制を施行し、大師町と改称しました。
1924年（大正13年）：川崎町、御幸村と合併して川崎市が新設され、大師町は廃止されました。
1972年（昭和47年）：川崎市が政令指定都市に指定され、旧町域は川崎区となりました。

池上家と新田開発

大師河原村一帯の開発に大きく貢献したのは、世襲名主の池上家でした。池上家の祖である宗仲は、池上本門寺と深い関わりがあり、その子孫である池上幸種が大師河原村の開発に着手しました。幸種は小田原北条氏に仕えていましたが、徳川家康には仕えず、農業に専念しました。1614年（慶長14年）に二ヶ領用水が完成する前年に亡くなるまで、自費で多摩川河口の萱野を開発しました。

幸種の息子である幸広は、父の遺志を継ぎ、1625年（寛永2年）から大師河原に隣接する海辺の寄州100町歩を開発し、稲荷新田村を成立させました。稲荷新田村は1702年（元禄15年）には1450石の石高を誇る、川崎市域で最大の石高を持つ村に発展しました。また、幸広は「大師河原の酒合戦」に登場する「大蛇丸底深」と同一人物で、酒豪として知られていました。

幸広から数えて4代目の池上幸豊は、1746年（延享3年）から多摩川河口の海辺で新田開発を始め、1761年（宝暦11年）に耕地面積14町歩の池上新田を完成させました。池上新田は耕地面積は小さく、移住者も少なかったものの、当時の技術としては画期的な埋め立て手法で開発されました。幕府は幸豊の技術と知識を評価し、新たな埋め立て予定地の選定を命じましたが、これは実現しませんでした。

交通

鉄道路線

鉄道省（現JR東日本）
東海道本線：川崎駅
京浜電気鉄道（現京浜急行電鉄）
大師線：池端駅（廃駅） - 花見橋駅（廃駅） - 大師駅（現川崎大師駅）

※京急大師線の鈴木町駅、東門前駅、大師橋駅、小島新田駅は、当時は未開業でした。

現在の町名

旧大師河原村、旧川中島村、旧稲荷新田、旧池上新田は、現在の以下の町名にあたります。

旧大師河原村：藤崎、伊勢町、大師河原、台町、観音（一部）、昭和（一部）
旧川中島村：大師本町、大師駅前、大師町、大師公園、東門前、川中島、観音（一部）
旧稲荷新田：四谷上町、四谷下町、出来野、日ノ出、塩浜、田町、江川、殿町、小島町、昭和（一部）
旧池上新田：池上新町、池上町

参照

出典

高橋嘉彦『ふるさと川崎の自然と歴史(中)』多摩川新聞社、2000年。ISBN 4-924882-41-0。
高橋嘉彦『ふるさと川崎の自然と歴史(下)』2000年。

関連項目

神奈川県の廃止市町村一覧
大師河原塩田

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